2008年11月17日

国際環境NGOグリーンピース・ジャパンは、瀬戸内海の因島(広島県尾道市)南端、家老渡港近くの埠頭で南極海調査捕鯨への出港準備を進めていた捕鯨船団の母船・日新丸が、11月17日午後2時過ぎ、同埠頭を離岸したことを確認した。日新丸は国際捕鯨委員会がクジラ保護区に指定した南極海に向かうと見られる。
埠頭では午前10時頃から、四方に紅白の横断幕を掲げたテント内で式典が行われた模様。
午後2時前、薄い雲に覆われる因島で蛍の光が流れる中、30人ほどの家族や関係者に見送られ、タグボートに誘導された日新丸は海上保安庁の巡視艇一隻を伴い、ゆっくりと旋回後、北東に向かい始めた。
因島から瀬戸内海を東方向に出航した日新丸に向け、グリーンピースは「WHALING ON TRIAL」、「調査捕鯨に税金12億?」と書かれた長さ20メートルの横断幕を広げ、12月からクジラ保護区で行われる予定の捕鯨に抗議した。

「すでに20年も行われているこの"調査"で国際的に認められる調査結果はほとんど出ていない。12億円もの税金をかけて行われる調査捕鯨から納税者が受ける恩恵は皆無に等しい」と、グリーンピース・ジャパン海洋生態系問題担当・花岡和佳男は調査捕鯨の即刻の中止を訴える。
調査捕鯨船団の出航に先立ち、本年度は異例の事態が続いている。例年捕鯨関係者を招いて下関港で行われる盛大な出港式は中止(注1)。先の新聞報道「調査捕鯨目標数、初の削減」(注2)につき、管轄官庁の水産庁は直ちに否定し、捕獲目標は昨年どおりミンククジラ935頭、ナガスクジラ50頭としている(注3)。
また、日新丸には今回初めて日本国籍でない乗組員が乗船しているとの情報もある。
これは今年5月にグリーンピースが乗組員による鯨肉横領を暴露(注4)後の、船を離れていった乗組員らの補充対策であると見られる。
11月10日には調査捕鯨の実施にあたっている日本鯨類研究所の資金繰りが悪化したことを背景に、事業の委託先である共同船舶と共同で経営合理化案を水産庁に提出。捕鯨船の一般公開の中止や、浅草の鯨肉専門店の2010年の閉店が明らかになった(注5)。
その一方で、捕鯨船団が補給船と鯨肉の日本への輸送船として利用していたオリエンタルブルーバード号は国際法違反が発覚し、旗国のパナマ政府が同船の船籍を剥奪。これによって南極海からの鯨肉輸送に大きな影響がもたらされる模様。
グリーンピースは本年度、クジラ保護区にキャンペーン船を派遣せず、調査捕鯨停止が実現するよう日本国内にて活動していく方針。

また南極海から帰国した調査船団員による捕獲鯨肉横領を独自調査で暴いたグリーンピース職員2名は調査手段を巡り逮捕・起訴され、年明けには公判が予定されている(注6)。
「捕鯨関係者内に今までにない混乱が見られる。当局によるグリーンピース・ジャパン職員2人への過剰な反応は、グリーンピースの活動が調査捕鯨当局による腐敗の急所をついていることを示している」とグリーンピース・ジャパン事務局長星川淳は語る。「日本の調査捕鯨政策の終焉が始まっている。今こそ破産した国営事業に税金が使われることを止める時。日新丸は直ちに進路を変更すべきだ。」
グリーンピースが今年2月に行った生活者意識調査では、回答者の71%が南極海での捕鯨を支持しないとの結果が得られた。グリーンピースは、今後も日本の納税者に呼びかけ、日本政府に対し調査捕鯨の停止を求めていく。
注1:下関の引接寺の岡崎氏によると、船団出港前の祈祷式は過去5年間、共同船舶の主催で同寺院で行われていた。しかし、今年度の式は共同船舶が主催を見送ったと岡田氏は語っている。一方同じ下関にある亀山八幡宮の高橋氏は、今年は同神社で捕鯨推進組織の主催による祈祷式が12月1日に行われると話す。また下関港の港湾当局者によると水産庁による11月前半の同港使用の申請は9月末にキャンセルされた。以降の再申請も現時点ではないという。
注2:朝日新聞(2008年11月13日朝刊一面)
注3: AFP (2008年11月14日)
Reuters (2008年11月13日)
注4:グリーンピース告発レポート『奪われた鯨肉と信頼』2008年5月15日(PDFファイル2.3MB) http://greenpeace.or.jp/docs/oceans/wm2008/doss.pdf ※印刷する場合は白黒をお勧めします。
注5:日経ネット(2008年11月11日) 調査捕鯨の鯨類研、鯨料理店を閉鎖へ資金繰り悪化で合理化案
注6:国際的な人権団体アムネスティ・インターナショナルはこの逮捕を「政治に裏打ちされるもの」として抗議し、また国際連合人権委員会も先月まとめたレポートで「表現の自由を不当に制限するもの」として日本政府を厳しく非難している http://www2.ohchr.org/english/bodies/hrc/docs/co/CCPR-C-JPN-CO.5.doc
お問い合わせ: 特定非営利活動法人グリーンピース・ジャパン 海洋生態系問題担当 花岡和佳男 広報マネージャー 城川桂子
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