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[1998年11月6日付]





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グリーンピースポジションペーパー
京都議定書の実施

国連気候変動枠組条約第4回締結国会議(1998年11月2〜13日、於ブエノスアイレス)に向けてGREENPEACE Internationalが作成した「Implementing the Kyoto Protocol Greenpeace Position Paper」の日本語暫定訳(1998年11月6日、グリーンピース・ジャパン作成)


ブエノスアイレスに「賭け」られている問題とは?

ブエノスアイレスで開催される第4回締約国会議(COP4)において大きな論点となるのは、京都議定書および気候変動枠組条約の批准と、実施に向けた努力に弾みを付けるためには何をなすべきかということである。COP4では、具体的な作業を示した行動計画、その達成の明確な期限、および補助機関への明確な実行責任の配分を定めなければならない。



[INDEX]




要 旨

  • 緊急の課題として京都議定書を批准、実施するためのタイムテーブル

    ブエノスアイレスに集う各国大臣達が発さなければならない主要な政治的メッセージは、京都議定書を批准するということ、そして各国は議定書の条項を実施するために緊急の課題として国内的措置を講じるということである。
    京都議定書は、附属書I諸国に対し、2005年までに約束の履行に関して実証可能な進展を示すよう求めている。2008年から2012年の間に求められている削減量を考慮すれば、COP4では、許容可能な最低限の実証可能な進展とは排出量を2005年までに1990年レベルと同等かそれ以下に削減することである、と定める必要がある。

    第2次国別報告書の第2回集計(FCCC/CP/1998/11)では、附属書II諸国では排出量が増加し続けていることが示された。COP4では、排出量が増加している附属書I諸国は、この増加を抑える対策を緊急に講じ、削減を開始しなければならないと決議すべきである。

  • 抜け道を塞ぐ

    京都議定書の抜け道を塞いだり限定したりするという点についても、進展がなければならない。吸収源やクリーン開発メカニズム(CDM)、排出量取引、共同実施に関する実施細目の策定に対しても、抜け道対策を組み込む必要がある。
    さらに、COP4では、緊急の課題として、京都議定書の排出量に関するコミットメントに国際的な航空輸送および海上輸送の燃料を含めるために必要なステップを踏み出す必要がある。新しい抜け道を許してはならない。

  • 交渉に科学的根拠を与える

    京都議定書の交渉最終段階では、さまざまな分野において、科学的考察は背後に押しやられていた。
    地球規模の排出削減要件の分析の手引きとするために気候変動に対する長期、短期の限度を設定するという提案は脱落し、排出量に関するコミットメント自体も科学的な根拠なく定められ、複数の吸収源(土地利用変化および林業)の取り扱いは科学的根拠よりも政治に左右され、科学的な有効性に疑問があるにも関わらず地球温暖化係数(GWP)の使用のような方法論的問題に重きが置かれた。

    COP4では、科学的根拠に根ざして京都議定書および気候変動枠組条約を議論するという基本を再び確立すべきである。
    科学上および技術上の助言に関する補助機関(SBSTA)の作業計画には、エコロジー的観点から見た気候変動の限度を定義する準備を含めるべきである。この限度は、第2期約束期間の排出削減に関するコミットメントを策定するために利用することができる。

  • 環境という観点において健全な柔軟性メカニズムの原則およびルールの策定

    排出量取引、共同実施およびCDMに関して、環境から見て健全な原則およびルールを設け、運用開始前に合意する必要がある。特に、2000年から開始されるCDMに関して、このような合意を形成する必要がある。COP4では、CDMに関して早まった決定をしないように注意する必要がある。

  • クリーン開発メカニズムを真にクリーンかつグリーンなものとする

    COP4では、再生可能技術や効率の高い最終利用技術の採用が促進されるように、CDMに関する基本原則や基準を確立する必要がある。

  • 気候変動防止と矛盾しない技術移転

    COP4では、MDB貸付と条約の目的との間に矛盾が発生しないようにする努力を改めて開始しなければならない。政府の輸出保証便宜が、気候変動防止目的と一致する、エネルギーおよび輸送部門の民間プロジェクトに対して与えられるように、附属書I諸国が対策を講じるよう、COP4で具体的措置をとる必要がある。

  • 不遵守制度についての交渉を開始

    京都議定書では法的拘束力のある義務と排出量取引の使用が強調されているが、不遵守に対する罰則は定められていない。柔軟性メカニズムの始動に伴う緊急の課題として、不遵守制度に関する交渉を開始し、不遵守に対する罰則規定の策定に結びつけるべきである。



京都議定書の批准および実施のタイムテーブル

ブエノスアイレスに集う各国大臣達が発さなければならない主要な政治的メッセージは、京都議定書を批准するということ、そして各国は議定書の条項を実施するために緊急の課題として国内的措置を講じるということである。
京都議定書は、附属書I諸国に対し、2005年までに約束の履行に関して実証可能な進展を示すよう求めている。2008年から2012年の間に求められている削減量を考慮すれば、COP4では、許容可能な最低限の実証可能な進展とは排出量を2005年までに1990年レベルと同等かそれ以下に削減することである、と定める必要がある。

第2次国別報告書の第2回集計(FCCC/CP/1998/11)では、ほとんどの附属書II諸国では排出量が増加し続けていることが示された。FCCC/CP/1998/11の第17条およびその脚注には、以下のように述べられている。

附属書I諸国からの温室効果ガスの総排出量(土地利用変化および林業を除く)は、全体として、2000年には1990年レベルを約3%下回り、2010年には約8%上回ると予想される。……附属書II諸国からの排出量は、2000年には5%、2010年には13%、それぞれ1990年レベルを上回ると推定される。……

このように、ほとんどの附属書II諸国は、排出量の長期的増加傾向を逆転させて2000年までに排出量を1990年レベルに戻すために必要な政策および措置を採択するという、第4条2(a)項で定められた拘束力のある義務を実施していない。また、前述の第4条2(b)項の文中には、次のような段落もある。

予測されている2000年の二酸化炭素排出量は、ほとんどの国について下方修正された。CO2排出量の上位5カ国の中で、(13)*1 米国だけは予測を上方修正した。

この増加を抑制し削減を開始するための措置を実施するためには、早急に行動を開始する必要がある。

COP4では、以下の事柄を採択すべきである。
  • 条約の第4条2(a)項および(b)項の義務を履行するためには、附属書I諸国が現在とっている対策では不十分である。

  • 2000年に排出量が1990年レベルを上回ると思われる附属書I諸国は、緊急の問題として、排出量の増加を抑制するための措置を講じなければならない。

  • 附属書B諸国は、京都議定書の発効を待たずに目標達成のために必要な政策および措置の実施とる必要がある。

  • 締約国は、京都議定書を第7回締約国会議(COP7)までに発効させられるよう、今後2年以内に京都議定書の批准を行うことを目指す必要がある。

  • 2005年までに実証可能な進展を得るため、附属書B諸国は、排出量を2005年までに1990年レベルと同等かそれ以下にしなければならない。



京都議定書の抜け道を塞ぐ

京都議定書の抜け道を評価したところ、議定書で求められている名目5.2%の排出削減どころか、総産業排出量および大気中への排出量の両方で1990年レベルを上回ることもあり得るという予想が示された。
問題は3種類ある。

■ 割当量の膨張*2

京都議定書の吸収源に関する条項(第3 条3項、潜在的には第3条4項も)を利用すれば、各締約国は、排出量予算を膨張させることが可能である。クリーン開発メカニズムでも、附属書I諸国の割当量全体を大幅に増加させる可能性のあるメカニズムが規定されている。
これらの問題は、京都議定書の実施細目で対処することが可能である*3。吸収源の条項もCDMクレジットも、大気中への排出量の総量をこれらを採用しない場合よりも増やす結果になると思われる。
これらの問題に対して、COP4では、以下のような対策を講じることが可能である。
  • 第3条3項の植林、再植林、および森林減少および第3条4項の追加的行動の定義を、SBSTAが「土地利用変化および林業に関するIPCC特別報告書」を十分に検討するまで待って決定する。同報告書は2000年5月までに完成する予定である。

  • CDMクレジットの使用に対して量的な制限を加えること、およびCDMプロジェクトに関して安全装置の追加性判断基準に合意すること(下記を参照)。
■発生源の除外*4

京都議定書の排出量義務には、国際的な航空・海上輸送による排出が含まれていない。第2次国別報告書の第2回集計(FCCC/CP/1998/11)によれば、「これらの排出量は、1990年から1995年の間に約10%増加しており、どのようなカテゴリーよりも増加率の大きな分野の一つである」。
COP4では、以下のような対策を講じることが可能である。
  • SBSTAに対して、緊急の問題として排出量の割当システム案および排出量を締約国の割当量に組み入れる方法を早急に検討し、COP5で報告するよう、要請する。
■ホットエアー*5

ホットエアーは割当量を膨張させるわけではないが、採用しなかった場合よりも排出量が増える結果になる可能性はある。
COP4では、以下のような対策を講じることが可能である。
  • 締約国が排出量取引を通じて割当量を売却、または共同実施を通じて譲渡できる量の上限(コンクリート・キャップ)を低く設定する(下記を参照)。



科学的裏付けを得る

京都議定書の交渉最終段階では、さまざまな分野において、科学的考察は背後に押しやられていた。地球規模の排出削減要件の分析の手引きとするために気候変動に対する長期、短期の限度を設定するという提案は脱落し、排出量に関するコミットメント自体も科学的な根拠なく定められ、複数の吸収源(土地利用変化および林業)の取り扱いは科学的根拠よりも政治に左右され、科学的な有効性に疑問があるにも関わらず地球温暖化係数(GWP)の使用のような方法論的問題に重きが置かれた。



排出量に関するコミットメントの
適切性に関する第2回見直し


条約の第4条2(d)項で要求されている通り、附属書I諸国の排出量に関するコミットメントの適切性に関する第2回見直しがCOP4で行われる。さらに、気候条約の実施(条約第7条2(a)項)および京都議定書の条項(京都議定書第3条9項および第9条)の見直しのためのタイムテーブルを確定する必要がある。第3条9項では、第2期約束期間の排出量に関するコミットメントの検討を2005年までに開始するようCOP/MOPに求めていることに注意すべきである。
また、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は2000年か2001年頃にも第3次評価報告書を作成し、COP7ではその評価結果を検討できる見込みであることにも注意しなければならない。

したがって、第2回見直しは、京都議定書で採択された排出量に関するコミットメントの適切性を見直す機会であると同時に、気候変動枠組条約および京都議定書の核となる作業の科学的根拠を再構築する機会でもあると言える。
核となる仕事とは、危険な気候変動を回避できる排出削減量を割り出し、その削減量を締約国間で公平かつ公正に割り当てるための方法を考案することである。
割当の問題は、最終的には政治的、経済的問題であるが、科学的評価技術を選択肢に有効に反映させることが重要である。

IPCCで長年主導的な役割を果たしてきた前議長、ボーリン教授は、1998年初頭、京都議定書の排出量に関するコミットメントは大気中の二酸化炭素の安定化にはほとんど役に立たないであろうと指摘した(サイエンス誌)。言い換えれば、たとえ京都議定書が完全に実施されたとしても、危険な気候変動を防止することはほとんど不可能であるということである。
よって、第2期約束期間では、附属書I諸国が第1期よりも大きな排出削減を行なわなければならないことは明らかである。また、附属書I諸国以外の締約国の排出量の増加も減らさなければならないことは明らかである。

COP4では、以下の項目を採択すべきである。
  • 京都議定書の排出量に関するコミットメントは、危険な気候変動を防止するには不十分である。

  • 拘束力のあるタイムテーブルを設定し、京都議定書の排出量に関するコミットメントおよび気候変動枠組条約の一般的義務を見直し、修正するためのプロセスを確立する。 排出削減と第2期約束期間に関する全体的事項についての交渉は、IPCC第3次評価報告書作成後、遅くとも2001年までに開始されなくてはならない。

  • 今後現れてくる気候変動の兆候を考慮に入れるため、京都議定書の排出量に関するコミットメントを2年に一度見直すプロセスを確立すること。

  • 排出削減交渉の方向性を示すために、気温上昇速度や長期的な海面上昇など、短期、長期の環境目標を定義、合意するプロセスを確立すること。



将来の地球規模の排出削減目標を導き出すための
エコロジー的限度の策定


気候変動枠組条約は、締約国に対して危険な気候変動を回避するよう求めているが、どのような変動が危険であるかについては指定していない。排出量に関するコミットメントの適切性をよりよく評価し、将来の排出削減レベルと削減の時期に関する決定に資するために、COPは、これらの限界値を策定するプロセスを開始する必要がある。
排出量に関するコミットメント、技術移転をはじめとする、今後の気候政策を定めていくためには、予防原則に基づき、エコロジー的観点から見た長期的気候変動の限度を策定することが必要である。

IPCCは、危険の定義(したがってエコロジー的観点から見た気候変動の限度の定義)を政治的な問題としている。IPCCは、危険とは何かについての判断に関連する情報を評価したり、総括したりするが、COPに対しては何の勧告も行わないことになっている。
しかし、第3次評価報告書では、変動の限界値を特定したり、生態系や食糧、農業、また人間社会に関する変化の規模や変動速度の違いによる影響を特定したりすることとなっている。したがって、COPでは、危険な気候変動であるかどうかの判断基準を定めておき、第3次評価報告書が完成した時点で報告書の検討が可能なようにしておく必要がある。

COP4は、以下の方法により、エコロジー的限度の策定を行い、地球規模の温室効果ガス排出政策を導くことができる。
  • IPCCの第3次評価報告書の結果も考慮し、COP7に至る、2001年末までの排出削減交渉の方向性を明示する、エコロジー的限度に関する合意に向けた作業計画およびタイムテーブルを策定する。

  • SBSTAに、危険な気候変動の判断基準に関する問題点などを検討すること、およびその特定のためのワークショップを1999年に開き、COP5で進捗状況を報告することを要請する。
    また、IPCCの第3次評価報告書に含めることができるように、この作業の結果得られた政策をIPCCに報告するよう要請する。

  • この問題をCOP5の議題にあげ、その後検討を行い、最終的にはCOP7で採択できるようにする。エコロジー的観点から見た気候変動の限度となる、温室効果ガス排出量の許容範囲の計算なども含まれる。



公正かつ公平な排出量割当システムの検討

気候変動枠組条約の第4条2(d)項並びに第7条2(d)項、および京都議定書の第3条9項および第9条で求められている見直しの一環として、また危険な気候変動を回避するために十分低いレベルで温室効果ガス濃度を安定化させるという目標を達成するため、許容可能な地球規模の排出量を公平かつ公正に配分する方法について検討する必要がある。
この問題に関する交渉は、排出削減の規模および京都議定書の第2期約束期間における対象範囲に関して妥結させなければならない段階となっている。
最終決定の段階では、この問題は本質的に政治的かつ外交的なものであるが、COP4では、この問題の科学的側面および技術的側面を検討するプロセスを開始し、今後のより政治的な交渉の準備を整える必要がある。

COP4は、SBSTAに以下を要請し、エコロジー的観点から見た気候変動の限度を策定し、地球規模の温室効果ガス排出政策を導くことが可能である。
  • 公正かつ公平な排出量割当システムを評価するアイデアやモデルの評価を開始し、今後2年間で作業を完了する。途中、COP5で進捗状況を報告する。

  • ブラジル提案の検討作業を継続する。ブラジル提案も、公正かつ公平な排出量割当システムの評価に関するアイデアおよびモデルのひとつとして、今後検討する。

  • 1999年中にIPCCに照会し、第3次評価報告書に検討結果を記載してもらえるように、政策課題を掘り起こす。



土地利用変化と林業:吸収源

この問題は非常に複雑であること、また、意図された効果とは逆の結果が生じる可能性があることが明らかとなった以上、COPで京都議定書の実施に必要な問題の実質的な検討に入る前に、この問題に関するIPCCの十分な科学的および技術的評価を待つ必要がある。
COP4における検討事項は、IPCCが土地利用変化および林業活動に関する特別報告書で検討する問題点を特定すること、および関連の議題を形成することに限定するべきである。

COP4では、以下の事柄に合意すべきである。
  • 第3条3項の定義の問題、第3条4項の追加的行動、およびプロジェクト関連の活動の実質的な検討を、土地利用変化および林業に関するIPCC特別報告書が2000年に完成され、SBSTAにおいて、検討を加え、COP6における決議案を作成するまで延期すること。

  • SBSTAに対し、定義、追加的活動、およびプロジェクト関連活動に関して締約国から提出された提案に関する疑問点や問題点を1999年中に特定し、特別報告書で考慮できるように、これらの問題点をIPCCに伝達するよう、緊急の課題として要請すること。



柔軟性メカニズムに関して環境的な観点から
健全な基本原則およびルールを確立する


京都議定書で規定されている柔軟性メカニズム(排出量取引、共同実施、およびクリーン開発メカニズム)は、相互に影響を与え合うため、これらを環境的観点から健全なものとするためには、すべてのメカニズムに適用される共通ルールや基本原則が必要である。
次に示す基本原則およびルールの策定を、COP4で採択するメカニズム策定作業計画に組み入れる必要がある。
  • 議定書の実施全体では、国内的措置を優先させなければならない。このため、各種の限度を設け、国内で実質的な行動がとられるようにしむける必要がある。
    つまり、排出量取引や共同実施、CDMの利用に量的な上限を設けるということである。

  • 排出量取引や共同実施を開始したり、およびCDMによる認証された排出削減量(CER)を使用するためには、まず、遵守制度に合意し施行しなければならないと規定すべきである。これには、排出量に関するコミットメントを超えているかあるいは報告義務に違反している締約国に対して、当該国が遵守状態に戻るまで排出削減量の譲渡を禁止することを含む。
    排出削減単位(ERU)、CER、または割当量の譲渡を行うためには、割当量の排出および譲渡の報告義務を遵守していなければならない。

  • 排出量取引、共同実施、およびCDMから得られる排出単位の売買に関する市場ルールについて、事前に合意する必要がある。市場ルールは、透明性を確保し、義務の遵守を保証し、売却国と購入国双方が責任を持ち、議定書の環境目標を強化するものとする必要がある。
    共同実施やCDMプロジェクト、割当量から得られる排出単位の取引を開始する前に、柔軟性メカニズムの法的枠組みについて合意する必要がある。
    柔軟性に関する各条項は、遅くとも第1期の約束期間の終わりまでに、その有効性を再評価する必要がある。また、報告書をCOP/MOPに送り、問題点があれば修正しなければならない。

  • 割当量の移転を行う国は、移転を追跡するシステムを確立しなければならない。このシステムでは、割当量の獲得および譲渡を複式帳簿により記録すべきである。
    要請があれば、排出量が発生したプロジェクトまたは国まで追跡できるように、譲渡分または取得分の発生国、その量が取得または譲渡された日付、価格等を項目に含めるべきである。

  • 柔軟性メカニズムを利用する締約国は、独立した専門家チームが行なう詳細な見直しプロセスの対象となることに合意しなければならない。



排出量取引

排出量取引のルールには、以下を含める必要がある。
  • 排出量取引を開始する前に取引のルールを策定すること。

  • 排出量取引システムから吸収源を除外すること。

  • 「ホットエアー」問題の影響を小さくするため、締約国に売却制限を設けること。
    割当量の売却または譲渡に3%の制限を設ければ、第1期の約束期間におけるホットエアーの影響を1990年の附属書B排出量の1%以内に抑えることができるものと思われる。

  • 購入制限を設け、締約国が対策の大部分を国内で行うようにし向ける。
    購入を購入締約国の割当量の10%以内に制限することで、国内措置が優先されるようにし向けることが可能と思われる。購入制限は、締約国が約束期間中に第6条および第17条に基づく譲渡により取得する合計量に対して適用する。

  • 売却国および購入国に対する共同責任システム。
    年間目録を基礎に、約束期間中、適用するものとする。本システムにより、売却国の割当量またはERUの割引を行うべきかどうかの方向性が示されることになる。



共同実施

共同実施プロジェクトから得られるERUの譲渡は、譲渡の上限および購入国および売却国の共同責任を含めて排出量取引のルールと同様のルールに従って行われるべきである。共同実施による吸収源プロジェクトは、京都議定書の第3条で認められたものに限定すべきである。

プロジェクトが真に追加的であるようにするため、また「ホットエアー」のローンダリングを防止するため、共同実施プロジェクトに関する追加性判断基準に財政的追加性を含めるべきである。



クリーン開発メカニズムを真にクリーンでグリーンにする

CDMを環境的な観点から効果的な方法で開始するためには、COP4において、以下の項目について合意する必要がある。
  • 排出量に関するコミットメントを達成するために利用できるCDMの量に上限を設ける。(例:1%)

  • いわゆる「クリーンコール」テクノロジーや原子力、大規模ダム計画等の持続不可能な技術など、ダーティな技術は除外する。

  • 追加性問題を解決するため、CDMクレジットの割引きを行う。

  • CDMプロジェクトが開始される前に、クレジットの事前積み立ての意義を評価し、必要なルールを策定する。

  • CDMプロジェクトの開始前にプロジェクトの適格性と追加性に関する判断基準を確立する。

  • 土地利用変化および林業におけるプロジェクト適格性の検討を、これらの活動に関するIPCCの特別報告書が将来のCOPで検討されるまで延期する。

  • CDM執行委員会をFCCCおよび京都議定書の機関的枠組みに統合する。

  • プロジェクト開始前に独立した運営組織を指定する。

  • プロジェクトの事前承認をクレジット請求の前提条件とすることに合意する。

  • プロジェクトのクレジットは達成されて初めて与えられるという条件に合意する。

  • 排出単位の譲渡に関する効果的な追跡調査システムを必要条件とする。

  • 独立した第三者の監査・検証システムを設置する。

  • 排出量などに関する報告義務を遵守していることを、プロジェクトに対するクレジット供与の前提条件とする。

  • CDMプロジェクトの資金調達を政府開発援助(ODA)プログラムおよび地球環境ファシリティ(GEF)負担金に対する追加的なものとするよう要求する。

  • 京都議定書に規定されたCDMを含むメカニズムについて、共通のルールおよび基本原則を策定する。

    詳細については、この問題に関する別のポジションペーパーを参照のこと。



不遵守制度

京都議定書を実行し、現実的で計測可能な環境面の効果と排出削減を達成して、国際的な信頼性と信任を維持するためには、強力で効果的な不遵守制度が欠かせない。不遵守の手順は強力で信頼性が高く、かつ効果的でなければならない。
これは、詳細な見直しや国別報告、および共同実施、排出量取引やCDMのルールなど、すでにFCCCおよび議定書の中にある手順と項目を基礎として構築されるべきである。

COPでは、議定書の不遵守制度の制定に向けた交渉をただちに開始するという決議を採択する必要がある。これは、FCCCの第13条について合意されたプロセスとは別プロセスとするべきであるが、FCCCおよび議定書による既存機関と緊密な連携を保って作業を進めていかなければならない。

最近、強力で効果的な不遵守制度が、モントリオール議定書および長距離越境大気汚染条約(Convention on Long Range Transboundary Air Pollution)の第2次硫黄議定書(the Second Sulphur Protocol)に従って創設された。これらの制度は、第18条に規定されたプロセスにより見直しを行い、さらに有効なものとされていくはずである。
このプロセスの中でも、モントリオール議定書に基づいて創設される法律専門家のアドホックグループが特に重要である。COP4でこのようなアドホックグループが創設されれば、第18条の対象とすべき項目の検討作業を開始することができると思われる。
この作業では、不遵守が発生した場合に対する拘束力のある措置を示すリストも策定すべきである。

第18条に基づく遵守制度以外に、柔軟性規定に関する合意様式、ルールおよびガイドラインには、附属書B諸国が遵守しなかった場合に対する罰則を含むべきである。



京都議定書における土地利用変化および林業

土地利用変化および林業活動に関するIPCC特別報告書は現在作成中であり、2000年5月までに完成する予定である。COPがこの問題について決議を行なう前に、京都議定書における吸収源の使用に関連する問題の全領域をカバーする、この報告書が完成される必要がある。
カバーする必要のある課題としては、計算方法や方法論的な問題から、大気安定化に関する吸収源の役割まで、広範囲に及ぶ。
大気中の温室効果ガス濃度を安全なレベルで安定化させるためには、生物的炭素貯蔵量の正味量を大幅に増加させると同時に、化石燃料の燃焼全体に対して厳しい制限を加える必要がある。
  • グリーンピースは、化石燃料による排出量を相殺するために議定書に定められた吸収源を使用することに対して、現在も非常に強い懸念を抱いている。我々は、以下の理由により、全ての締約国およびその他の利害関係者にこれらの問題に関する検討を延期するよう強く求めるものである。
    • 誤ったインセンティブおよび漏れ

      京都議定書は、潜在的に、原生林を皆伐して成長の速い樹木を植林することを促進する、誤ったインセンティブを含んでいる。植林、再植林、および森林減少の定義が不明瞭または不完全であることや、構造的、方法論的欠陥があることが、このようなインセンティブが生じる理由である。
      この問題は、カナダが提唱している定義案で考えると分かりやすい。カナダ案を採用すると、原生林を皆伐することによりクレジットを獲得することが可能になる。構造上、森林減少は非常に狭義に定義することが可能である一方、非附属書I諸国の場合は森林減少が全くカウントされない。そのため漏れ(すなわち、森林伐採活動の他地域への移動)が起こる可能性が非常に高い。

    • 矛盾した方法論

      締約国は、吸収源の報告に関して首尾一貫した方法論を使用しておらず、数多くの重要な発生源が報告されない可能性がある。

    • 長期的な大気安定化という意義の正しい理解の欠如

      吸収源の使用を提案している国のほとんどが吸収量算定というミクロ的側面を中心に据えている一方で、長期的な大気安定化の意義が見過ごされている。大気安定化には、化石燃料からの排出量の大規模削減と森林および土壌中に貯蔵される炭素量の大幅な増加の両方が必要である


      IPCCによる土地利用変化および林業問題に関する特別評価に、以下の項目を含むという合意を締約国間で形成する必要がある。

    • 次世紀にわたる炭素循環および気候システムに関して、地球生物圏が将来担うと思われる役割を策定する。

    • 土地利用変化および林業を、化石燃料などの温室効果ガス発生源からの排出量を相殺するために使用した場合の影響を評価する。この影響評価においては、大気中のCO2などの温室効果ガスの濃度に関する、安定化目標の可能性範囲を考慮すること。

    • 生物多様性の保全等、その他の環境目標に関連したプラスおよびマイナスの相乗作用の可能性を評価する。化石燃料からの排出量を相殺するために土地利用変化および林業活動を使用することにより生じるものを対象とする。

    • 温室効果ガスの生物的貯蔵に対して人為的に引き起こされる変化を適切に定義する。この定義は、全ての締約国を比較するための統一基準として使用する。

    • 生物的貯蔵量(ストック)の変化の数値化や検証のための基準を策定する。京都議定書締約国の割当量の達成のために人為的変化を使用する場合の影響に対する科学的不確実性の評価を含む。

    • 現在提案されている、または将来的に可能性のある土地利用変化および林業に関する活動およびそのクレジットのもたらす、生物多様性の保全や、生態系および農業生態系の安定性、持続性、健康、回復力に対する短期、長期の潜在的効果を評価する。
      特に、土地利用変化および林業の場合、原生林、一次林、または高度自然林の皆伐または収穫の加速など、自然生態系を悪化させる、環境に対して思わぬ悪影響が発生する可能性があることに注意すること。



    発展途上国の参加

    この問題は、COP4における暫定議題6である。仮に最終的な議題には残らないとしても、これは、議題4に基づく議長の非公式な諮問の対象にはなるものと思われる。
    グリーンピースとしては、この問題はCOP4の主要な議論とすべきではないと考えているが、念のため、この問題に関する我々の立場を以下に記しておく。

    以下の条件が満たされるのであれば、附属書I以外の締約国が法的拘束力のある排出義務を自主的に策定することは歓迎すべきことである。
    • 当該締約国が、条約の附属書I、京都議定書の附属書B、および京都議定書策定時に交渉が行われたその他の遵守制度、または法的に同等の制度に参加する。

    • 交渉により合意された排出制限は、通常の産業活動による予想排出量を大きく下回るものである。
      通常の産業活動による予想排出量に近い数値やそれを上回る数値に排出制限を設定することは、排出量取引や共同実施において、いわゆる「トロピカルエアー」問題を発生させることになる。このようなことは、容認することはできない。

      自主的な制限を課す(法的拘束力のない約束)という提案は、受け入れるべきではない。
      この場合も、非附属書I諸国が取引や共同実施システムに参加する権利を与えることになるからである。



    *1:文書11の脚注13:「1995年のドイツ、日本、ロシア連邦、イギリス、およびアメリカ合衆国のCO2排出量は、合計で附属書I諸国の排出量の71%を構成する」【文中脚注箇所へ戻る】

    *2:割当量の膨張(別名、予算外クレジット)が起きると、起こらなかった場合よりも多くの温室効果ガスが大気中に排出される結果となる可能性がある。このような状況は、容認された総排出量増加分が、各種活動による実質排出量減少分よりも多く、割当量の膨張に繋がった場合に生じる。【文中脚注箇所へ戻る】

    *3:第3条の第7項および第8項で議定書に規定されているその他2つのメカニズムも、排出量予算を膨張させる。土地利用変化による排出量をオーストラリアのベースラインに含めることも、HFC類、PFC類、およびSF6のベースラインとして1990年か1995年を選ぶ選択肢も、予算を膨張させることになる。
    土地利用変化のベースラインに関する条項は、それを採用しない場合に比べ、約0.9%予算を膨張させると試算されている。ベースラインに組み込まれた土地利用変化による排出量は、京都議定書が採択されていなければ大幅に減少しただろう(そして事実そうであった)。したがって、これを採用していなければ、このような排出の全て、またはほとんど全てが発生しなかったと思われる。
    HFC等に関するベースラインの変更は、約0.6%予算を膨張させる。もしこれらがベースラインに含まれなければ、この増量分の排出は発生しなかったであろう。
    これらの条項のいずれも、COPの決議により変更することは不可能である。【文中脚注箇所へ戻る】

    *4:締約国の割当量から発生源を除外すると、除外された発生源が増加した場合、大気中への排出量が全体として増加する結果となる。これが、ここで論じている内容の例である。【文中脚注箇所へ戻る】

    *5:これは、京都議定書が採択されていなかった場合に実際に排出されると思われる量を上回る排出量の割り当てを、ある締約国が受けている場合に生じる状況である。排出量の割当が譲渡できなければ、これが問題となることはないし、また附属書B諸国からの排出量の合計は割当量の合計を下回るものと考えられる。
    排出量の割当が排出量取引やその他の方法で譲渡可能である場合は、ホットエアーの存在により、排出量全体が増加する結果となる。(ただし、割当量の合計は超えない)【文中脚注箇所へ戻る】


    訳注:「the second compilation and synthesis of second national communications」は、「第2次国別報告書の第2回集計」とした。



    [以上、1998年11月6日付ポジションペーパー]


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