YES & NO―星川淳グリーンピース・ジャパン事務局長余談
8 / 14   2010

神国日本の……

久しぶりに“余談”らしくと読書感想文を書きためていたら、ちょうど8月15日にふさわしい本を寄贈いただいたので、まずは早川タダノリ著『神国日本のトンデモ決戦生活』(合同出版)の紹介から。

 

先の大戦下のチラシや広告、新聞・雑誌などの出版物から、題名どおりの集団洗脳体制を客観的に炙り出す好著。改めて一次資料を眺めると、腹が立つより哀しくも笑えてしまう。

 

たとえば一貫して気合が入っているのが月刊誌『主婦之友』で、ついにザラ紙モノクロ刷りとなった敗戦1カ月前の「勝利の特攻生活」特集号では、「敵の本土上陸と婦人の覚悟」「皇国と共に苦難を突破して」「勝ち抜く壕生活」「焦土菜園の手引き」といったヤケ気味の目次を並べ、本文ではこう檄を飛ばす。「敵の本土上陸、本土決戦は、地の利からも、兵員の上からも……我が方は決して不利ではありません。……一億一人残らず忠誠の結晶となり、男女混成の総特攻隊となって敢闘するならば、皇国の必勝は決して疑いありません」(宮崎タマヨ「敵の本土上陸と婦人の覚悟」)。

 

これにはさすがに、「――てアナタ、本土決戦のほうが有利だなんて、そんなワケないでしょう。だったら最初から本土決戦でやればいいじゃないスか」とツッコミを入れる著者の解説も、全体に抑制が効いていて時代の狂気を浮かび上がらせる。しかし本当に哀しいのは、いまの日本社会もあまり変わっていないこと。ちなみに宮崎女史は2年後、戦後初の女性参議院議員になったそうだ。

 

*     *     *

 

渡辺京二著『黒船前夜』(洋泉社)をようやく読んだ。2ちゃん系で囁かれる高給取りの噂と異なり、GPJ事務局長職は家計もプライベートな時間も持ち出し気味だから、2900円の新刊書は手が出なくて図書館の順番待ちだったのだ。

 

18世紀から19世紀にかけてのロシアによる日本接触の試みを、ロシア人、幕末日本人、そしてアイヌの三者交流として掘り起こす着眼は正解だし、『逝きし世の面影』(平凡社ライブラリー)に続く懐の深い歴史観もおおむね共感できるが、副題に掲げる「ロシア・アイヌ・日本の三国志」にしてはまだ表面を撫でている。もとは熊本日日新聞の連載だそうだから、あるいはフィールドワーク不足かもしれない。実際にアイヌの人びとから聞き取りをし、千島は無理としても、カムチャツカ、サハリン、アムール河口・下流域などを歩いてみれば、さらに深みが増しただろう。

 

とはいえ、これからもっと探究されるべき一つのジャンルを開いた仕事だと思う。西欧近代と日本との出会いを北方史と南方史の窓から、しかも世界と地続きに描き出すというテーマで15年温め続け、まだ発表に至らない私の小説第2作ともどこか通じるので、完成に向かって背中を押された気がする。

 

ついでに、ここ半年ほどの読書リスト。仕事と関係ない本を読む余裕などないわりに、けっこう雑読している。献本いただいたもの[*]以外は、ほとんど新書ばかりだ。大陸と(朝鮮)半島と(日本)列島を結んで、現在に続く“弥生の呪縛”を解き明かす課題はライフワークになりそう。

 

*『ハチはなぜ大量死したのか』ローワン・ジェイコブセン(文藝春秋)

『ユーラシア胎動』堀江則雄(岩波新書)

『オランダ風説書』松方冬子(中公新書)

『〈私〉時代のデモクラシー』宇野重規(岩波新書)

*『しんしんと、ディープ・エコロジー』アンニャー・ライト+辻信一(大月書店)

『グーグルに異議あり!』明石昇二郎(集英社新書)

『電子書籍元年』田代真人(インプレスジャパン)

『謎の渡来人 秦氏』水谷千秋(文春新書)

*『暴風地帯』中村敦夫(角川書店)

『日本歴史の中の被差別民』(財)奈良人権・部落開放研究所編(新人物文庫)

『国家論』田原総一郎+姜尚中+中島岳志(中公新書ラクレ)

『倭の正体』姜吉云(三五館)

『卑弥呼の正体』山形明郷(三五館)

*『マスメディア 再生への戦略』世古一穂+土田修(明石書店)

『多極化世界の日本外交戦略』神余隆博(朝日新書)

*『温暖化論のホンネ』枝廣淳子+江守正多+武田邦彦(技術評論社)

『日本開国』渡辺惣樹(草思社)

『天皇とアメリカ』テッサ・モーリス-スズキ+吉見俊哉(集英社新書)

『貧困大国アメリカII』堤 未果(岩波新書)

*『日本と朝鮮半島2000年』NHK「日本と朝鮮半島2000年」プロジェクト編著(NHK出版)


Posted by jun at 15:21
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