YES & NO―星川淳グリーンピース・ジャパン事務局長余談
10 / 3   2010

だいじょうぶノーベル平和賞?

NHKが今夜(10月3日)、NHKスペシャルの枠でスクープドキュメント『“核”を求めた日本――被爆国の知られざる真実』を放映した。

http://www.nhk.or.jp/special/onair/101003.html

 

1960年代後半、佐藤栄作政権が非核三原則を国是化する裏で、中国の核保有に対抗して日本も核武装する構想が、ドイツとの秘密協議もまじえながら進んでいた。長いあいだの疑惑に、ようやく証言と証拠が出てきたことを歓迎したいし、NHK取材班の調査報道に敬意を表する。

 

次は、プルトニウム利用に固執する日本の原発政策が、「核武装オプションを維持する」というこの裏構想といまなお直結していることを検証してほしい。

 

 

以下、NGO市民社会の友人たちからお知らせ二つ。

 

▼新刊『いのちの中にある地球――最終講義:持続可能な未来のために』デヴィッド・スズキ著+辻信一訳(NHK出版)

もうすぐ来日するカナダ生まれの日系人生物学者&ジャーナリストが、遺言のつもりで語った生物多様性賛歌。10月11日(月)にはNHKで特別番組も。

http://www.nhk.or.jp/savethefuture/program.html

 

▼イラク・アフガン戦争に従軍した兵士たちの証言『冬の兵士』(岩波書店)を翻訳したTUP(Translators United for Peace)グループから、仙台、山形、福島、秋田、盛岡、青森、千葉、埼玉の各地で行われる。「冬の兵士」9都市リレー証言集会(10月5日〜10月12日)のお知らせ。

http://www.tup-bulletin.org/modules/main/index.php?content_id=34

 


Posted by jun at 22:42
9 / 25   2010

だいじょうぶ検察?

検察がらみの椿事が続きます。

 

●検察はいつから外交も担当するようになったの?

(尖閣諸島事案は、沖縄基地の恒常化を狙って菅政権がアメリカと計り、菅政権が折れたという以外の見方は難しいと思うけど……)

 

●なんで大阪地検のデータ改ざんにそんなに驚くの?

(少しでも検察を相手にしたことがある人なら、牽強付会が検察の常道なのは常識でしょ。村木事案の本質は、春の小沢一郎(西松事件)に続いて夏の石井一(村木事件)を上げれば政権交代を阻止できると踏んだ勇み足にありそうだけど……)

 

グリーンピースのクジラ肉事件だって、2008年5月に私と佐藤が告発人として提出した、国営事業におけるクジラ肉横領の告発状と証拠のクジラ肉1箱を東京地方検察庁が受理してから、約1カ月後に佐藤と鈴木が逮捕されるまでの間、つまり東京地検が正式に横領を捜査していたはずの期間中に、嫌疑のかかった船員たちが乗り組む疑惑の調査捕鯨船団そのものが、北西太平洋での調査捕鯨に出航するのを許してしまいました。しかも、出航前夜には横領の事実を強く示唆する衝撃的な事件が起こっていたのに……。まずい物証はその航海中にすべて始末できたでしょうから、検察による証拠隠滅幇助ですね。

  検察には、政権=公権力の守護者ではなく、本当の意味で公共の利益の守護者に徹するという民主司法の原点を学び直すこと(というか、はじめて学ぶのでしょうけど)を勧めます。


Posted by jun at 01:24
9 / 8   2010

クジラ肉裁判判決を受けて

グリーンピース・ジャパンのサイトや報道などでご存知のとおり、9月6日の青森地裁判決は懲役1年、執行猶予年の有罪を言い渡す不当なものだったため、佐藤と鈴木は即日控訴しました。

日本の司法の限界を示す残念な結果でしたが、控訴プロセスとともに、国際人権規約の第一選択議定書(国連に対する個人通報制度)を批准する国内手続きも進みそうなので、"人権の秘境"状態に風穴を開けることができるかもしれません。

下記に昨日配信のメールマガジン「GREENPEACER」の関連部分を引用します。

少し補足すると、引用中の事務局長所感でも触れている、国民主権下での"民主"司法とはどうあるべきかに関する無理解は許しがたいと感じました。民主社会においては政府三権(立法・司法・行政)も第四権(メディア&NGO)も国民・市民の海に浮かんでいるわけで、とりわけ国民・市民の税金を使って政府が行う事業について、司法は政府に限りなく厳しく、国民・市民の側に立ってチェック機能を果たすことを求められるはずです。しかし、行政府に属する検察官も、司法の国民窓口ともいえる地方裁判所の裁判官たちも、そんなことは教えられたことも考えたこともないようです。司法教育における人権、とくに国際人権法の重みを大幅に増す必要があるのではないかと思います。

▼ グリーンピース・ジャパンのプレスリリース
http://www.greenpeace.or.jp/press/releases/pr20100906t2_html

▼ 事務局長所感、市民社会の声など(メールマガジン9月7日号より抜粋)
http://greenpeace.or.jp/pipermail/greenpeace-vision/2010/000252.html

▼「ニュースの深層・番外編」(9月3日@ロフトプラスワン)見られます
http://www.ustream.tv/recorded/9320916(前半)
http://www.ustream.tv/recorded/9322481(後半)

E┃D┃I┃T┃O┃R┃I┃A┃L┃ ━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━━━━━━━━━━━━━━
クジラ肉裁判の青森地裁判決を受けて
グリーンピース・ジャパン事務局長 星川 淳
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2年あまりにわたるクジラ肉裁判の第1ラウンドが終わりました。懲役1年、執行猶予年の不当判決に対し、グリーンピース・ジャパンの佐藤と鈴木は即日控訴しました。ここまで応援してくださった皆さま、本当にありがとうございます。

青森地裁は、「従来の調査捕鯨活動において一部不明朗な点があった鯨肉の取り扱い」が、「被告人らが本件鯨肉の存在を公表したのを契機に見直された」ことをはっきり認めながら、一方で税金を使った国営事業におけるその"不明朗"さを明朗にしようとする努力、つまり市民・国民の「知る権利」とジャーナリストやNGOの「知らせる責任」を一蹴しました。

日本ではじめて真正面から問われた国際人権(自由権)規約上の「表現の自由」についても、"違法は違法"という初歩的で形式的な判断から一歩も踏み出しませんでした。裁判長は佐藤と鈴木が「捜索・押収に類する」行動をとったことを非難し、また入手したクジラ肉を捜査機関(東京地方検察庁)に届ける前に公表したことが盗みを構成する一要素だと決めつけています。

これは二人の逮捕直後、私が青森地方検察庁で事情聴取を受けたとき、開口一番「NGOの分際で捜査機関さえ令状がなければできないことをやったのは許せない!」と吐き捨てた検察官とそっくりです。国(公権力)がやることに国民・市民は口も手も出すなという、民主主義の真逆の発想ではないでしょうか。捜査機関を裁判所の令状で縛るのは、国(公権力)による市民生活の不当な侵害を防ぐためであって、その論理を市民活動に当てはめようとすること自体が、国民主権に対する底知れぬ無理解を示しています。

今回のようなケースで公共の利益に注目する場合、佐藤と鈴木を罰することによって得られる公共の利益と、二人の行為を容認することによって得られる公共の利益とを天秤にかけ、どちらがより民主的な社会につながるのかを公正・公平に吟味するのが司法本来の仕事だと思いますが、青森地裁がその責任を果たした形跡は見当たりません。国際人権(自由権)規約は、「国内法に違反する」というだけの理由で表現の自由を制限してはならないと定めています。

判決を傍聴するために来日したグリーンピース・インターナショナルの事務局長クミ・ナイドゥは、南アでアパルトヘイトと闘った生い立ちを踏まえて、「この判決こそ市民権と人権に対する窃盗行為だ」と語気を強め、「内部通報者の命がけの情報提供に応えた二人の道義的な行動は、ネルソン・マンデラやマハトマ・ガンディやルーサー・キング牧師の系譜に連なるもの」と述べたうえで、日本政府に対し、この裁判で浮き彫りになった捕鯨船団内の不正について、独立機関による調査を行うよう求めました。

クジラ肉裁判の第2ラウンドは、仙台高等裁判所に進みます。今回の判決が示すとおり、まだまだ"人権の秘境"状態にある日本の民主主義を進化・深化させるために、いますぐグリーンピース・ジャパンのサポーターになってください。この裁判を一緒に闘いましょう!

▼ 日本にグリーンピースのようなNGOが必要だと思う方、ぜひご支援をお願いします。
https://www.greenpeace.or.jp/ssl/support/supporter_form_html?gv

▼ クジラ肉裁判判決:入廷から控訴まで――青森現地ビデオ http://www.youtube.com/user/greenpeacejapan

1┃判決について日本の市民社会から
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この判決を受けて、日本の市民社会から批判の声が湧き上がっています。

刑法という狭い国内法の枠内で判断するのでなく、より上位の憲法の価値基準、そして国際人権法の水準に沿った判決を裁判所に望むことは、現在の日本社会では許されないのだろうか。

刑法によって守ろうとした価値とそれを形式的には犯してでも守ろうとした価値を比較して実質的な違法性を判断することは、違法性阻却レベルでは可能なはず。そうした実質的判断のために刑法は単に形式的に構成要件に該当するだけでなく個別の事案に即した違法性阻却判断を予定している。

この事件のような問題が刑法レベルに矮小化されることなく、大きな憲法価値のレベルで議論される社会でありたい。ごく当たり前に憲法価値が裁判所、マスコミ、そして市民のレベルで行動原理となる日が来ることを切望している。
                 ――伊藤 真(伊藤塾塾長・弁護士)


今回の判決については、法的にさまざまな批判を加える余地がある。しかし最も重大なことは、今回の判決が、NGOやジャーナリズムの正当な調査活動に対する、刑罰による威嚇だということである。結果として、公権力が関わった犯罪行為などの告発に対しても、萎縮効果が生まれてしまうことになる。グリーンピースの活動家二人の話ではない。これは、日本のNGO活動に対する挑戦である。
――寺中誠(アムネスティ・インターナショナル日本、事務局長)

ふたりの行為が調査捕鯨の不明朗な慣習を白日の下に晒した功績は認めても、不法侵入と窃盗の「罪は罪」、ただそれだけのことしか言わない判決は、司法が市民の自由や権利を擁護して社会をすこやかな方向に変えていく使命を放棄し、六法全書と起訴状をつきあわせてあてはまる答を見つけることでよしとしていることを物語るものでしかありません。これでは市民の表現の自由が萎縮するし、その前に司法が萎縮しています。
――池田香代子(作家・翻訳家、世界平和アピール七人委員会)


日本の裁判所が裁かれたような判決だ。ぼくら自身も無意識のうちに人権意識が萎縮していた。日本の常識が世界の非常識であることを知らせていく良い機会だと思う。最終的には国連人権理事会への通報にもつなげてほしい。
                         ――鈴木邦男(評論家)


2┃世界各地から「知る権利はゆずれない!」の声
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クジラ肉裁判の判決が伝わると、全世界40カ国の日本大使館前で市民の知る権利を求める声が上がりました。アメリカ、イタリア、ノルウェー、台湾など20カ国以上で行われたアクティビティをスライドショーでご覧ください。

▼ スライドショーはこちら
http://www.greenpeace.or.jp/?gv


Posted by jun at 16:10
8 / 14   2010

神国日本の……

久しぶりに“余談”らしくと読書感想文を書きためていたら、ちょうど8月15日にふさわしい本を寄贈いただいたので、まずは早川タダノリ著『神国日本のトンデモ決戦生活』(合同出版)の紹介から。

 

先の大戦下のチラシや広告、新聞・雑誌などの出版物から、題名どおりの集団洗脳体制を客観的に炙り出す好著。改めて一次資料を眺めると、腹が立つより哀しくも笑えてしまう。

 

たとえば一貫して気合が入っているのが月刊誌『主婦之友』で、ついにザラ紙モノクロ刷りとなった敗戦1カ月前の「勝利の特攻生活」特集号では、「敵の本土上陸と婦人の覚悟」「皇国と共に苦難を突破して」「勝ち抜く壕生活」「焦土菜園の手引き」といったヤケ気味の目次を並べ、本文ではこう檄を飛ばす。「敵の本土上陸、本土決戦は、地の利からも、兵員の上からも……我が方は決して不利ではありません。……一億一人残らず忠誠の結晶となり、男女混成の総特攻隊となって敢闘するならば、皇国の必勝は決して疑いありません」(宮崎タマヨ「敵の本土上陸と婦人の覚悟」)。

 

これにはさすがに、「――てアナタ、本土決戦のほうが有利だなんて、そんなワケないでしょう。だったら最初から本土決戦でやればいいじゃないスか」とツッコミを入れる著者の解説も、全体に抑制が効いていて時代の狂気を浮かび上がらせる。しかし本当に哀しいのは、いまの日本社会もあまり変わっていないこと。ちなみに宮崎女史は2年後、戦後初の女性参議院議員になったそうだ。

 

*     *     *

 

渡辺京二著『黒船前夜』(洋泉社)をようやく読んだ。2ちゃん系で囁かれる高給取りの噂と異なり、GPJ事務局長職は家計もプライベートな時間も持ち出し気味だから、2900円の新刊書は手が出なくて図書館の順番待ちだったのだ。

 

18世紀から19世紀にかけてのロシアによる日本接触の試みを、ロシア人、幕末日本人、そしてアイヌの三者交流として掘り起こす着眼は正解だし、『逝きし世の面影』(平凡社ライブラリー)に続く懐の深い歴史観もおおむね共感できるが、副題に掲げる「ロシア・アイヌ・日本の三国志」にしてはまだ表面を撫でている。もとは熊本日日新聞の連載だそうだから、あるいはフィールドワーク不足かもしれない。実際にアイヌの人びとから聞き取りをし、千島は無理としても、カムチャツカ、サハリン、アムール河口・下流域などを歩いてみれば、さらに深みが増しただろう。

 

とはいえ、これからもっと探究されるべき一つのジャンルを開いた仕事だと思う。西欧近代と日本との出会いを北方史と南方史の窓から、しかも世界と地続きに描き出すというテーマで15年温め続け、まだ発表に至らない私の小説第2作ともどこか通じるので、完成に向かって背中を押された気がする。

 

ついでに、ここ半年ほどの読書リスト。仕事と関係ない本を読む余裕などないわりに、けっこう雑読している。献本いただいたもの[*]以外は、ほとんど新書ばかりだ。大陸と(朝鮮)半島と(日本)列島を結んで、現在に続く“弥生の呪縛”を解き明かす課題はライフワークになりそう。

 

*『ハチはなぜ大量死したのか』ローワン・ジェイコブセン(文藝春秋)

『ユーラシア胎動』堀江則雄(岩波新書)

『オランダ風説書』松方冬子(中公新書)

『〈私〉時代のデモクラシー』宇野重規(岩波新書)

*『しんしんと、ディープ・エコロジー』アンニャー・ライト+辻信一(大月書店)

『グーグルに異議あり!』明石昇二郎(集英社新書)

『電子書籍元年』田代真人(インプレスジャパン)

『謎の渡来人 秦氏』水谷千秋(文春新書)

*『暴風地帯』中村敦夫(角川書店)

『日本歴史の中の被差別民』(財)奈良人権・部落開放研究所編(新人物文庫)

『国家論』田原総一郎+姜尚中+中島岳志(中公新書ラクレ)

『倭の正体』姜吉云(三五館)

『卑弥呼の正体』山形明郷(三五館)

*『マスメディア 再生への戦略』世古一穂+土田修(明石書店)

『多極化世界の日本外交戦略』神余隆博(朝日新書)

*『温暖化論のホンネ』枝廣淳子+江守正多+武田邦彦(技術評論社)

『日本開国』渡辺惣樹(草思社)

『天皇とアメリカ』テッサ・モーリス-スズキ+吉見俊哉(集英社新書)

『貧困大国アメリカII』堤 未果(岩波新書)

*『日本と朝鮮半島2000年』NHK「日本と朝鮮半島2000年」プロジェクト編著(NHK出版)


Posted by jun at 15:21