緊迫するイラク情勢に対するグリーンピースの声明
2003年1月28日
グリーンピースはブッシュ政権によるイラクに対する攻撃に反対し、これを防ぐための活動を展開していきます。 グリーンピースは、国連の承認に関わりなくこの戦争に異議を唱えます。
グリーンピースがこの戦争に反対する理由:
- この戦争は人間と環境に甚大な被害を及ぼすものである
イラクのほとんどの衛生、水道、医療、電力システムは91年の湾岸戦争で破壊されたまま未だに復旧しているとはいえません。食糧の供給はほぼ全面的に配給制に支えられており、もし行政機構の機能不全が起これば大規模な混乱が生じる危険にさらされています。
核兵器、生物・化学兵器の使用を伴わない従来型の戦争であったとしても、この戦争の犠牲者は25万人、そのほとんどが民間人になることが推定されています。また、飢餓および社会秩序の崩壊によってさらに25万人の命が奪われることも予想されます。もし戦争がエスカレートして核兵器、化学兵器が使われることになれば、死傷者は400万人にまで膨れ上がるだけでなく、放射能汚染、化学物質汚染などの負の遺産を後代にまで残すおそれがあります。
- ブッシュの目的がイラクの石油支配権であるのは明白
アメリカ政府がイラクに攻撃を仕掛けるとしたら、それは「明らかに軍需産業と石油業界に利益をもたらそうというブッシュの意図に裏付けられている」とネルソン・マンデラ元南アフリカ共和国大統領は語っています。イラクはサウジアラビアに次ぐ世界第2位の石油埋蔵量を誇っています。イラク国内の反体制派を代表するイラク国民会議の指導者は、自分がイラクの実権を握っていたら「アメリカの石油会社は大儲けできるだろう」と過去に話しています。
ドイツ銀行のアナリストによると、イラクの「政権交代」で最大の利益を得るのはエクソン・モービル社(エッソやモービルなどのブランドで知られる世界最大の石油会社)です。エクソン・モービル社は2000年に共和党の候補者たちに120万ドルの献金をしています。また、アメリカが気候変動枠組み条約の京都議定書から離脱することをブッシュ大統領に強く働きかけた会社でもあります。エクソン・モービル社はアメリカがこれからも石油に依存することで利権を確保してゆく意思を表明しています。グリーンピースを含めた多くの団体がこの会社を批判する活動を展開しているのは、このためです。
小泉政権もアメリカ政府への追随姿勢を示し、すでにイージス艦を派遣するなどイラク戦争への協力をすすめてしまっているのです。
- 戦争は大量破壊兵器に対する有効な手段ではない
グリーンピースはイラクの武装解除、ならびに大量破壊兵器を保有するすべての国の武装解除を支持します。しかしながら、大量破壊兵器を保有している、あるいは保有している疑いのある国に対して、軍事的先制攻撃を仕掛けることが大量破壊兵器の廃絶に繋がるとは考えていません。このような対策では、複数の国に何度も繰り返し攻撃を仕掛けなければならなくなるからです。現在、いかなる国際協定にも縛られることなく核兵器を保有している国は、インド、パキスタン、イスラエルです。北朝鮮も核兵器の開発をしている、とする見方もあります。また、ブッシュ政権の発表によると、少なくとも13カ国が生物兵器の開発をすすめているといいます。ブッシュはこれらの国々を次々と攻撃してゆくつもりなのでしょうか。
世界に必要なのは国際的軍備管理と武装解除のシステムです。そしてそのような枠組みはすでに存在しています。ジュネーブで開催された国連軍縮会議、さらには核不拡散条約、核実験全面禁止条約、生物兵器禁止条約、化学兵器禁止条約などの国際条約などの条約がそれです。
ところがこれらの精緻な条約は、強化されるのとは反対に、核保有国の背任行為によって根幹を揺さぶられています。それを先導しているのがブッシュ政権の行動です。ブッシュ米大統領が本当に大量破壊兵器を懸念しているのであれば、軍備管理、核非拡散、軍縮の公式な手続きを尊重するべきです。
大量破壊兵器を世界からなくして真の安全保障を築くための五つのステップ
- 核不拡散条約(NPT)の全面的発効と強化
これは非締約国が条約に参加することであり、核保有国が条約の義務を果たすということです。核不拡散条約というのは核を保有しない国はこれからも保有しない、核保有国は交渉を通じて保有する核兵器を廃棄するという国際的な契約です。アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国は30年以上もこの国際法の重大な違反を犯しています。
ブッシュが大統領の座についてから、アメリカは従来型の戦闘に使用できる新しい核兵器の開発をすすめています。アメリカは10万個の核兵器は絶対に保持すると頑なな態度を示しています。2000年に開催された核不拡散条約の再検討会議においてアメリカを含めた締約国は、核不拡散条約の発効に向けて、核実験の禁止をはじめとした軍縮に関する13項目に同意しました。ところが昨年ブッシュ政権は新たな条項は認めないと発表しました。
- 原子力発電の早期廃止
核兵器を保有しようとする国は、原子力発電所の建設を通して兵器を開発しようとします。原子力発電から派生する放射性物質は軍事利用と平和利用という諸刃の剣であるために、査察の目を逃れられることが可能なことからこのような手段がとられるのです。安全な処分方法がなく、何万年にもわたって放射線を出しつづける原発の廃棄物も含めたすべての放射性物質は「安物爆弾」の材料になりうるものです。このまま原子力産業に放射性物質を生み出しつづけることを許すことは自殺行為です。
- すでに存在する放射性物質の危険性を最小限に留める
過去50年にわたる原子力発電所の乱立と無責任な核兵器の製造によって、世界にはすでに放射性物質が溢れています。このなかでも旧ソビエト連邦に属していた国々がもたらした問題は最も深刻な問題です。国際社会はソビエト連邦が残した負の遺産の後始末に共同責任を負い、核物質管理のための資金援助をしなくてはなりません。これにかかる費用は、イラクに戦争を仕掛ける費用の数分の一で、核兵器の拡散を防ぐ手立てとしては戦争よりもはるかに有効な手立てです。ところがブッシュ政権は旧ソビエト連邦国の核物質管理強化のための予算を削減してしまいました。
核廃棄物の処理方法として最も思慮に欠ける方法が再処理です。再処理は、原発の使用済み核燃料を、ウランとプルトニウムに分離する方法で、核兵器開発のための材料の入手をより容易にするものであるばかりか、その過程で大量の放射能を環境中に放出するものです。日本を始めとして、再処理をしている国々は核燃料の再処理はただちに中止すべきです。
- 生物兵器禁止条約、化学兵器禁止条約の強化
ブッシュ政権はこれらの条約を強化するのとは反対に、その根幹を揺るがそうとしています。例えば、2001年には、生物兵器の検証体制の確立につながるはずの生物兵器禁止条約の議定書を、強制的な検査はバイオテクノロジー産業の利益を損ねるという理由で、拒否権を発動して否定してしまいました。
- 再生可能エネルギーの開発をすすめ、化石燃料と原子力発電への依存を断つ
世界経済が化石燃料、特に石油に依存していることが国際関係を歪ませ、紛争の火種になっています。化石燃料は安全保障の観点からだけではなく、地球の気候を保全するという視点からも段階的に撤廃されなくてはなりません。またそれにかわる原子力も必要ありません。充分な投資と政治的意志があれば、私たちが必要とするエネルギーは再生可能な自然エネルギーですべてまかなうことができるのです。電力のみならず、工業が必要とする熱や運輸関連も、自然エネルギーによって供給することが可能なのです。
爆撃がいかに "ピンポイント"であっても、戦争によって21世紀の地球の問題を解決することはできません。真の安全保障は軍事力では創り出せません。真の安全保障は、紛争の原因に取り組むことによって得られるものです。貧困、限られた物資資源の奪い合い、不正。グリーンピースはけっしてこれらすべてのことがらに通じているわけではありませんが、国際的な軍備放棄を唱えると同時に、エネルギー安全保障の視点から、すべての国が利用することのできる再生可能エネルギーを提唱すること、また、化学薬品や遺伝子組み替え技術に頼らない持続可能な農業を後押しすることで、食の安全などに貢献していると考えています。これらの対策は安全保障に替わるものではありません、安全を保障する唯一の希望なのです。
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