鈴木徹のブログ
26 October
2009

ドイツの子どもたちから届いた千羽鶴

9月末にドイツの子どもたちから鳩山首相に思いのこもった千羽鶴が届きました。その子どもたちはドイツの青少年環境グループ「グリーンチーム」のメンバーで、ミュンヘンに近い街、ワギングアムジーで活動する「グリーンチーム・タンポポ」のメンバーです。「グリーンチーム」とは、10〜15才の子どもを中心に環境問題について取り組む活動グループで、ドイツ全土に900のグループがあります。

その中の一人エバゲリンさん(Evagaline 14才)は、"TOKYO TWO"として知られる東京のグリーンピースのメンバー佐藤と鈴木が、日本の調査捕鯨の不正を告発して逆に逮捕され裁判にかけられようとしているのを知り、「2人の公平な裁判とクジラを守るために何かしなくては!」と思ったそうです。

エバゲリンさんの「グリーンチーム・タンポポ」は以前、捕鯨とクジラについて学校内にインフォメーションのポスターを掲げたり、街頭で署名を募ったりする活動を行いました。
かつて日本に住んだことのある子どもから、日本には愛する人の健康や幸せを祈るために千羽鶴を折る習慣があると聞いたエバゲリンさんとチームのメンバーは、早速、思いをこめて千羽鶴の制作を始めました。そして、ドイツの子どもたちによる色とりどりの千羽の折り鶴は9月28日、鳩山首相に届けられました。子どもたちは、民主党が公約した官僚の腐敗撤廃と税金のムダづかいの削減を挙げ、調査捕鯨はまさにその2つの問題にあたるとして、折り鶴とともに鳩山首相に調査捕鯨の中止と"TOKYO TWO"への公平な対応とを求める手紙を送りました。
ドイツ、ワギングアムジーの子どもたちは世界市民の一員として問題意識を持ち、日本の新政府と新しいリーダー鳩山首相に大きな期待を寄せています。

子どもたちの自発的な真心の応援に、"TOKYO TWO"の一人として心から感謝します。
日本の調査捕鯨の問題が海外でどれほど市民レベルでの反日摩擦を起こしているか、海外生活の経験がある方々はご存じかと思います。調査捕鯨は「税を投じて友人なくす」と、元外務省副報道官の谷口智彦氏も調査捕鯨の外交的問題を指摘しています。日本の信頼回復のためにも、今年末のコペンハーゲンCOP15で鳩山首相が大いに活躍するためにも、ぜひ新政府として調査捕鯨の見直しを早急に表明してもらいたいものです。


Posted by suzuki at 13:33
24 September
2009

捕鯨問題に感情的になるのは当たり前かも

ホエール・ウォッチングで考える(その3:最終)

ホエール・ウォッチングに参加して、潮を吹きながら悠々と泳ぐザトウクジラの姿に感動し、今回のオーストラリア訪問で出会ったたくさんの人々からインスピレーションを受け、考えさせられたことがありました。

(c) Greenpeace
私はあくまでも「感情論」を横によけるスタンスでしたが、オーストラリアで何度も調査捕鯨の不正を熱弁する中でふと自分に問うことがありました。それは、「クジラや政府の腐敗に対して感情的になって何が悪いの?」ということ。

「5才の子どもが見ておかしいと思ったら、それはすでに政治的に腐敗している」という言葉があります。国民に何もメリットがないのに、一部の利権だけのために南極海まで税金を使って大きな船団を送り、巨大な海洋性野生動物のクジラを1000頭近く殺戮し、欲張って捕りすぎたらそのまま海に投棄し、クジラの体にガンが見つかっても公表せずに販売用にパッキング、さらにはクジラ肉を横領して闇市場や政治家に送り続けている。おまけに調査といいながらランダム・サンプルの原則も守らず、まともな研究成果もないのに「調査捕鯨」と主張している……。

これまで日本政府は、捕鯨問題に関して諸外国に対し「感情的な議論をすべきではない」と言いつつ、逆に自らは“感情的”に一部の利権を守るだけの主張を繰り返してきたのではないでしょうか。

5才の子どもがこれを聞いたらどう思うでしょう? ちょっと難しいかもしれないけど……。

「感性の時代」と言われている中、「心を失った社会」が目の前に横たわっています。

そんな時代に、あえて自分たちのみずみずしい感性を積極的に発揮して、クジラという野生動物と人類の共通財産と言われる南極海の環境を守るために、日本政府の腐敗に対し「感情的にNOを突きつける」(もちろん絶対非暴力の原則を守りつつ)――個人的にはそれでいいのではないかなと思いました。

(c) Greenpeace
午後、二回目のクルーズはイルカの群れが一緒に泳ぎ、ザトウクジラと同じようなショーで出迎えてくれました。シドニーはいま500万人都市になったそうですが、そんな大都会からポンと船に乗って10分でイルカの群れ、20分でザトウクジラの群れに会える。イルカやクジラを身近に感じられる人々が捕鯨問題に感情的になるのは当たり前かも、と思いました。

日本も先の衆議院選挙で旧政権にNOを突きつけたように、まったく意味のない利権ビジネスに多くの野生動物の生死を巻き込むことに、国営事業である調査捕鯨の不正を隠蔽する歪んだ仕組みに、そして日本がだんだんおかしな国になっていくことにも、日本人として感情のこもったNOを突きつけてみませんか(あくまでも非暴力の枠内で)?

この旅を通じて、ほんとうにたくさんの新しい友人ができました。船の中で、知らない人から「あなた、あのアクティビストでしょ? 水曜日の講演に行きたかったけど、都合がつかなかったのよ」と声をかけてもらううれしいハプニングもありました。地元メディアで大きく取り上げられたので、私の顔を覚えていたようです。

(c) Greenpeace
日本の調査捕鯨を厳しい目で見ている海外の人々は、調査捕鯨が大きな嘘のかたまりで、補助金や天下りといった政府腐敗の巣窟であることを知っています。日本の信用回復のためにも、調査捕鯨の早期中止は非常に重要です。

同じことを考えている人たちは日本の新政権にも、官僚にもたくさんいることは明らかです。産業界にも官僚の中にも、本当に捕鯨問題によって迷惑している人たちが少なからずいます。
新政権が国民の期待に応えられるか?
今後の動きに注目しましょう。


Posted by tsuzuki at 12:20
15 September
2009

ホエール・ウォッチングで考える(その2)

先日、和歌山の田辺市でマッコウクジラが湾に入り込んで出られなくなった出来事がありました。地元の人たちがなんとか出してあげられないかと心を痛めていたのですが、二週間後に自力で出ていくことができ、ヘリコプターで追いかけて外海に消えていくところまで確認して、はじめて皆が胸を撫で下ろしたという一件です。

(c) Greenpeace
私はオーストラリア滞在最終日にシドニー湾沖でホエール・ウォッチングに参加して、ザトウクジラ3頭が私たちの船の近くまできて力強く優雅に泳ぐ姿に感動しながら、田辺市の人たちのクジラに対する共感的な気持ちとそれにともなう行動は、クジラを身近に感じているオーストラリアをはじめとする外国とまったく変わらないと思いました。

そして、その田辺市の一頭のマッコウクジラを多くの日本人が心配したエピソードと、田辺市が捕鯨で有名な太地町と直線距離で約50kmしか離れていないということを、私のオーストラリア滞在中の約20近くにおよぶ取材やミーティングでお話ししたところ、多くの方がかなり興味深げに聞いていらっしゃいました。

私はあまりにもこの問題に深く関わるポジションにいるので、スタンスとして「クジラは賢い動物だから」「クジラはかわいいからかわいそうだ」という意見は活動に反映しないようにしています。私の個人的な調査捕鯨反対への主な動機は、「政府や業界の腐敗から日本を守ること」です。そして、これはグリーンピースが調査捕鯨の中止を求める姿勢にもつながっています。

グリーンピースは捕鯨問題を環境問題としてとらえています。捕鯨推進派の「欧米社会はクジラがかわいいし、賢い動物だからと言って反対している」というプロパガンダはグリーンピースに関するかぎり的外れです。

プロフェッショナルなアクティビストとして、私もこの部分だけは今回のオーストラリアでいろいろな議論に巻き込まれても、一歩も譲っていません。「クジラがかわいいから捕鯨に反対」というだけでは調査捕鯨の中止につながらないと、オーストラリアの人々には「その議論はひとまず横においた方がいい」と話してきました。すべての人が納得するわけではないのですが、私の仕事は、日豪両国のあいだにクジラに対して大きなギャップがあることを認識してもらい、捕鯨問題の本質は政府の腐敗にあることを知ってもらう点にかかっていますから、その目的は一歩も二歩も前進したと思っています。

(c) Greenpeace
オーストラリアにも調査捕鯨や捕鯨産業の内情についての詳細が伝わっていないこと、そしてやはり発想や視点が日本とは大きく異なることから、捕鯨問題の受けとめ方や意見は人それぞれです。このたびの訪問でいろいろな出会いがあり、考えさせられたので、次回はその話にふれたいと思います。(Photographer:Jonas Liebschner)

ホエール・ウォッチングで考える(その3)へつづく


Posted by suzuki at 19:25
14 September
2009

シドニーでザトウクジラに「はじめまして」

ホエール・ウォッチングで考える(その1)

今回のオーストラリア訪問の最終日には素敵なイベントがありました。

(c) Greenpeace
私のプレゼンテーションに参加された中の一人にホエール・ウォッチング業界では有名な方がいらっしゃったのですが、私のプレゼンにいたく共感していただき、「ぜひシドニーのホエール・ウォッチングに!」と招待してくれました。

実は私、ホエール・ウォッチングははじめての体験。ドルフィン・スイムは和歌山で一度経験したことがありますが、日々の活動で捕鯨問題に深く関わっていながらも実際にクジラを見たことがなかったのです。

まあそれはそれで、私にとって反捕鯨活動の最たる動機が「政府と捕鯨業界の腐敗の究明」であるという証拠だと思いますが、オーストラリアの皆さんは「クジラを見たことがないのに、そこまで自分のリスクを犯して反捕鯨活動をするなんて!」と、私からしてみれば意外なアングルで感動されていました。そんなところからぽっと出てきたオファー。乗らない手はありません。

「ビグルスBiggles」という愛称で呼ばれているホエール・ウォッチング専門家ピーター・ハリスさんのアレンジにより、たくさんの観光客と一緒にホエール・ウォッチング専用(!)の大きな船に乗り、専門家から「プライベート講義」をしてもらいました。

(c) Greenpeace
「クジラはなにしろ野生の生き物だから、必ず会えるとは期待しない方がいいよ」と聞かされて出発したので「そんな簡単にいないよな〜」と思いつつ、ホエール・ウォッチングの現場を見られるだけでもいい勉強になるからと気楽にかまえていたのですが、シドニー湾を出てなんと20分後には数頭のザトウクジラに囲まれることになるなんて、出発のときは想像もつきませんでした。

シドニー湾を出て外海へ。映画『ファインディング・ニモ』で有名になったEAC(東オーストラリア海流=日本でいう黒潮)に船を向けると、あっというまに水平線手前にクジラの潮吹きを確認。近づいていくと3頭のザトウクジラ(こちらではハンプバックと呼ばれています)たちがゆったりと優雅に泳いでいました。

ホエール・ウォッチングの基本ルールとして、船はクジラの100m以内に近づいてはならないのですが、そこで船を止めたあと勝手にクジラが寄ってくる場合は問題ないのだそうです。なので、100m手前でひとまずストップ。

ビグルスさん曰く、「クジラには三種類いる。まったく我々に関心を持たないマイペースなタイプ、避けていくタイプ、そして好奇心旺盛で寄ってくるタイプ。こればかりは見つけて近づかないかぎりわからない」

今回はラッキーにも三番目のタイプに当たったようです。

(c) Greenpeace
ビグルスさんが見るところ、一番大きいのが14〜5mくらい。ほんの少し小さいのがもう1頭と、さらに小さい1頭。彼らはとても好奇心旺盛で、手を伸ばせば届きそうな距離で、静かで優雅なショーを繰り広げてくれました。水上に姿を現すたびに船からは大きな歓声が上がります。ただただ単純に、自然への畏怖と敬意を抱く瞬間でした。これだけ大きな海洋性野生動物が自分たちから好奇心で寄ってきて、しばらく船と戯れる姿を見て、感動しない人なんていないでしょう。

ザトウクジラはホエール・ウォッチングでもっとも人気のあるクジラです。オーストラリアでは多くの人たちにとって、一番に浮かぶクジラのイメージはやはりザトウクジラなのです。

一昨年、日本が南極海調査捕鯨でザトウクジラを捕獲対象にすると発表して国際世論で大騒ぎになりました。結局、アメリカをはじめとする各国の反対を受け、IWC(国際捕鯨委員会)の正常化を進めることと引き換えにザトウクジラの捕獲計画を取りやめたもの。私は、捕鯨推進派はその話を出せば騒がれるのをちゃんと知っていて、確信犯でザトウクジラを引っ張り出したと理解しています。この件ひとつとっても、クジラが政治的なカードとして使われていると思える節があります。嘘で塗り固めた調査捕鯨がそんな形で国際世論における日本人のイメージをつくっていく――まさに「国を一部の受益者に売り渡している」のが調査捕鯨なのです。つくづく、調査捕鯨の不正を許せないと思いました。(Photographer:Jonas Liebschner)

ホエール・ウォッチングで考える(その2)につづく


Posted by suzuki at 18:02