I LOVE SUSEA -海洋保護区がニッポンの寿司を守ります- 国際海洋シンポジウム2008 -海から魚がきえる?私たちが今できること-
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特定非営利活動法人 グリーンピース・ジャパン 〒166-0023 東京都新宿区西新宿8-13-11 NFビル 2F 電話:03-5338-9800 FAX:03-5338-9817
シンポジウム報告 -何ができるか見えてきた!
■■講演: エレン・K・ピキッチ博士(ストーニーブルック大学 海洋保存科学機関 事務局長 )
    「生態系を基盤に健全な漁業管理を」
■講演資料: 生態系に配慮した漁業管理の取り組み−生態系アプローチとは(pdfファイル 9.49MB)
 
エレン・K・ピキッチ氏(C)Greenpeace--古くからの漁場は次々と枯渇し、今、漁業の最前線は公海や深海へと移動しています。かつて無尽蔵と思われた水産資源の減少を、生態系(エコシステム)の角度から検証し、過剰漁業や乱獲によってある種の個体数が減ることで生態系にどのような影響があるかを紹介しました。例えば、フカヒレを目当てに年間7300万頭ものサメが乱獲され、その個体数は過去約30年間で87%〜99%の減少率といわれるほど激減しています。これにより、サメを天敵としていたエイが増え、エイが食べるホタテが減少し、西大西洋のある港でホタテ業が崩壊した例があります。またカリビア(カリブ)海では、サメの減少によりサメを天敵とするバラクーダ(中型魚類)が増加、バラクーダが食べるパロットフィッシュが減り、パロットフィッシュが餌とするサンゴに棲む藻類が増えたことによってサンゴが失われる現象がおきています。ピキッチ博士は、混獲や底引き網の問題にもふれ、適切な漁業管理は生態系の保全を基盤とすべきであり、生態系の考え方によって、人間が必要とする水産資源の持続可能な利用だけでなく、水鳥の餌やプランクトンの生殖までも含めた総体的な生態系の相互依存への影響を考慮すべきである。--
■■講演: カラム・ロバーツ教授(ヨーク大学環境学部海洋保全生物学者)
    海洋保護区の絶大な効果を紹介
■講演資料: 海洋保護区:海と水産業の回復をめざして(pdfファイル 5.76MB)
 

カラム・ロバーツ(C)Greenpeace漁業を一切行わない完全に保護された海洋保護区が、どのように生態系を回復し地域漁業に利益をもたらしているかを紹介。世界各地の実例を挙げながら、海洋環境の保護と持続可能な漁業への切り札として海洋保護区設立の重要性を訴えました。また、魚のサイズと生殖能力の相関を示し、数年間または数十年間にわたる保護により海洋保護区で大きく育った大型魚の重要性を強調。

「海の回復力は、保護のレベルに比例し、永続的な漁業の禁止などによって完璧に保護すれば、効果も大きくなることがわかってきています。マグロなどの回遊魚保護のためには、その種が一番ダメージを受けやすい海域に保護区を設置することが資源の回復に役立つと指摘。例えばクロマグロは、日本海への入り口でボトルネックとなっている狭い海域や、クロマグロが魚群をつくって集まる海域などを海洋保護区として保護することが効果的です。現在、世界の海で海洋保護区となっている海域は、全体の0.1%にすぎません。海を変えたいのなら、海洋保護区の設置を広めることです。海を豊かな本来の姿に戻すことで、保護区からのスピルオーバー(あふれ出し)効果により、漁獲量も回復していきます。」

■■講演: アントン・ジムウェレイ 氏(太平洋島しょ国フォーラム漁業機関 ナウル協定加盟国(PNA)コーディネーター)、中西部太平洋諸国の取り組みを紹介
■講演資料: ナウル協定第3次履行措置 (pdfファイル 1.00MB)
 
アントン・ジムウェレイ?氏(C)Greenpeaceアントン・ジムウェレイ氏は、太平洋島嶼国フォーラム漁業機関のナウル協定加盟国(PNA)コーディネーターを務める中西部太平洋の水産業専門家です。中西部太平洋でのマグロ漁は年々拡大しており、水揚げ量は年間240万トン。その44.1%がPNAの漁獲高です。この豊かな水産資源は乱獲のターゲットとなっており、島々のEZZ(排他的経済水域)以外の公海で過剰上漁業が蔓延し、EZZ内にも被害が及んでいます。PNAには、メバチマグロとキハダマグロの漁獲高を2004年のレベルに抑えるとの合意があります。また、はえ縄やまき網の操業も2004年以前のレベルに抑えるガイドラインがあり、海外の漁船もこのガイドラインを尊重してほしいと訴えました。
■■講演: 和田一彦氏(株式会社亀和商店 代表取締役社長)、MSC(CoC)認証取得 仲卸業の選択について紹介
■講演資料: 『海のエコラベル』MSC認証 (pdfファイル 1.89MB)
 
和田一彦氏(C)Greenpeace

築地で三代目仲卸業社長を務める和田氏は、日本で初めて海のエコラベルと呼ばれるMSC(Marine Stewardship Council: 海洋管理協議会)のCoC(Chain-Of-Custody Certification:加工流通過程の管理)認証を取得した経緯と、仲卸の立場から持続可能な漁業と海洋環境の保護について講演。

-- 一言で言うと、獲りすぎではない魚であることの証明のようなもので、消費者の皆さんにそれを区別してもらおうというものです -- とMSC認証を紹介。

-- MSC認証の大切なポイントは、第一次産業から市場にでるまでのトレーサビリティがあることです。そのため、流通企業にもCoC認証が必要であり、毎年、第三者機関による監査もあります。最近、さまざまな食品の産地偽造問題が話題になりましたが、第三者の監査が入ることで「○○産だと思って売っていた」ということがなくなります。仲卸業として、取引先の漁場や漁師が持続可能でなければ困るし、また商品の差別化のためにも、いい魚を取引したいと思って模索する中で、MSC認証に至りました。--

和田氏は気仙沼ので漁業を営む畠山重篤氏から環境問題について影響を受けたことも大きかったと語り、またアラスカの持続可能な漁業を推進する州憲法を紹介しMSC認証の意義を訴えました。

■■講演: 山本泰幸氏(イオントップバリュ株式会社 トップバリュ商品本部 生鮮食品部 部長)、世界で一番魚を販売している小売業者としての役割とは
■講演資料: イオンの取り組み−持続可能な魚の販売 (pdfファイル 1.70MB)
 

山本泰幸氏(C)Greenpeace世界最大の小売業社ウォルマート、2位のカルフールや3位のテスコと比べても、魚の販売量はイオンの方が多いと発表。世界で一番多く魚を売っている小売業者として、イオンは持続可能な仕入れの確保のため、資源管理されている裏づけのある産品に

切り替えていると紹介。

-- 未来永劫、日本の消費者に見合った量の仕入れができることを目指し、生産者と小売、そして消費者のWin - Win - Winの状態が理想。水産物ではMSC認証の商品を取り扱い、イクラやタラコなどの魚卵類では毎年1千万ピースのMSC認証の商品を販売しています。--

-- しかし一番の問題は、資源管理にかかるコストへの消費者の理解が進まないこと。店頭では、持続可能な漁業というよりも、アラスカの自然の美しさを語りながらMSCの意義を紹介することで消費者への呼びかけをしています。-- とイオンの取り組みを紹介し、資源管理の危機状態は認識しているものの、小売としてそれを説明する必要があるのか、またどのように提示するのかが難しい課題ですと報告しました。

-- MSC認証は、消費者に到達すべき目標の提示がされていなかったことが問題点のひとつです。例えば、エコバック持参を呼びかけて行ったレジ袋削減では、消費されないレジ袋の数がそのまま石油資源の削減につながり、二酸化炭素がどのくらい削減できたかを定数値として提示が可能。しかし、魚では定数値化した目標設定が提示できないので、結果の表示法に思いをめぐらせている -- と現状について説明しました。

■■講演: 花岡和佳男、グリーンピースの海洋保護キャンペーンのビジョンを発表
■講演資料: グリーンピースの活動:海洋保護区設立を目指して(pdfファイル 1.99MB)
 

花岡和佳男(C)Greenpeace-- 私たちは漁業や魚食文化の否定ではなく、海との共存をめざし、持続可能な漁業を応援しています -- とグリーンピースの取り組みを紹介。

人間の活動が海洋環境へ与える悪影響を地図で示しながら、海の驚異的な回復力を促進する選択肢が残されています――それは海洋保護区のグローバルネットワーク設立と持続可能な漁業の管理ですと訴えました。

海が本来の回復力を取り戻すために、公海を中心とした世界の海の40%を海洋保護区に指定し、また、国連の定める「国際生物多様性年」である2010年までに、日本に海洋保護区を設立し、公海の海洋保護区グローバルネットワーク設立についての国際的論議で日本が積極的リーダーシップを発揮すべきです。このシンポジウム閉幕後に、私たちが選ぶ行動を私たちの孫やひ孫が評価します。グリーンピースは、行政をはじめ、海洋の専門家や漁業関係者、水産物取り扱い業者や消費者、他のNGO団体など多くの方々ともに、持続可能な漁業と海の環境保護のために海洋保護区設立に向けて活動をつづけていきますとグリーンピース海洋生態系担当として決意を表明しました。

■■■質疑応答セッション パートU

■参加講師:エレン・K・ピキッチ氏、カラム・ロバーツ氏、アントン・ジムウェレイ氏、
  ユージン・パンゲリナン氏、和田一彦氏、山本泰幸氏、花岡和佳男

 

(C)Greenpeace質問:海洋保護区の設置に地元の漁師は反対しないのでしょうか?

回答:ロバーツ氏
反対はありますが、たいていの場合、地元の漁業が崩壊の危機にみまわれ、状況の打開策として海洋保護区が選択されます。年々海洋保護区の効果が科学的にも証明されるようになり、地元の漁業復活に大きく貢献する事例も増えています。海洋保護区に強く反対した地元漁師たちが、保護区設置後、一番のサポーターになるケースが多いのです。

質問:海洋保護区の設置にはFAO (国連食糧農業機関)との協議があると聞いていますが、どのような基準で設定するのですか?

回答:ロバーツ氏
基準は今現在、議論され開発されている最中です。FAOは近年、海の持続可能な利用についてガイドラインを発表しました。それらを海洋保護区の基準として借りることもできます。海洋保護区は総体的な生態系の回復を実現します。また、商業的に価値の高い種の繁殖場所や餌場など、貴重な海域を海洋保護区として資源回復をめざします。これらを原則として、保護区をどこに設置するかなどの基準は広く理解されるようになってきています。

回答:ピキッチ氏
ロバーツ氏が紹介したような生物学的な視点から設置される海洋保護区ですが、試験的に設置される場合は、モニタリングが容易である近場の海などに設置されることもあります。

質問:混獲について、投棄されていても他の生き物の餌になるのだから問題ではないのでは?

ユージン・パンゲリナン氏(C)Greenpeace
回答:ピキッチ氏
それでも問題であるといえるでしょう。北太平洋のヘルビットという市場価値の高い魚がトロール船で混獲されています。市場価値の高い魚をその価値を生かすように使用しないのは資源の無駄使いといえるでしょう。

質問:PNA(ナウル協定加盟国)同盟国でない国の船が、公海ポケット(周囲を各国の排他的経済水域で囲まれた公海)で漁するのをどうやって防止しているのでしょうか?

回答:ジムウェレイ氏
PNAの加盟国の船でなくてもPNAのライセンスが必要となります。PNAのEZZ(排他的経済水域)で漁をしなくても、公海ポケットで漁をしたいのならPNAのライセンスの対象となります。

質問:日本に海洋保護区は無いのですか?知床のように世界遺産として漁業と共存しながら保護されているところはあると思いますが。もし日本に海洋保護区が設置されるなら、どのようなルールに基づく必要があるのでしょうか?

回答:花岡
海洋保護区の設置条件は生態系にとって重要な産卵場や餌場などを科学的に選んでいく必要があります。世界自然遺産など今あるものをうまく使って、海洋保護区が設置できたらいいと思います。

質問:この2年間、今後の見込みを含めてMSC認証商品の傾向は上昇でしょうか、下降でしょうか?

回答:山本氏
先ほど魚の卵で1千万ピースの売り上げがあると申し上げましたが、売り上げ傾向は価格 と比例しています。欧米でのMSCの認知度があがり、また世界的な魚食ブームもあって価格が上昇しています。ある意味付加価値がついて個別の商品の販売数は減っているかもしれませんが、イオンは取り扱う水産物を持続可能で科学的に裏づけのあるものに切り替えていく方針ですので、MSC認証商品の販売量は増加することになります。

質問:和田さんのお店からMSC認証の商品を買うレストランは、メニューにMSCのロゴを載せていますか?

回答:和田氏
残念ながら、現在日本国内でMSCのロゴマークをメニューに表示できるレストランはありません。それは、レストランもトレーサビリティのCoC(加工流通過程の管理)認証を取らなくてはいけないからで、それには費用がかかります。一つのメニューのためにその費用をかけるのは難しいですし、またMSC認証付の魚種がまだまだ少ない上に、季節ごとにメニューを変えていく必要があり、それに使用できる魚すべてにMSC認証があるわけではないのです。将来、MSCロゴを載せるレストランが増えてほしいと思いますが。

エレン・K・ピキッチ氏、カラム・ロバーツ氏(C)Greenpeace質問:本来MSC認証など、国など公共の役割なのではないのでしょうか?どうして民間の会社が普及に努力しているのでしょうか?

回答:ピキッチ氏
国や公共はトップダウンのアプローチになりがちですが、MSC認証は非常に商業的で、一つの市場重視のアプローチをとった環境保護だといえます。そういう意味で、民間企業が導入や普及にリーダーシップをとるのは自然だと思います。また、アプローチの種類として、馬をトレーニングするのに「にんじんと鞭」がありますが、エコラベルはこの場合「にんじん」だといえるでしょう。商品に市場価値を付けることによって、自主的な行動を促進し、持続可能な商品が広がるのです。MSC認証の認知度は、欧米に比べ日本ではまだ低いということでしたが、日本の消費者のように海洋問題の教育が浸透し、環境保護の関心が高い国民が、今後どのように変わっていくのか興味深いです。

回答:ロバーツ氏
ヨーロッパでの現象として、エコラベルの乱立があり、消費者への情報過多となりました。どのラベルが信頼できるのか選べないのです。ヨーロッパでは今、共通のエコラベルを制定する動きになっています。厳しい条件をクリアした信頼できるエコラベルをつくためです。

質問:世界の人が今の消費量を維持したままでは、環境の回復ができないと聞きました。食べるものを減らさないと環境の保護はできないのでしょうか?

回答:花岡
確かに人口は増えていて食糧問題は深刻です。しかし、同時にたくさんの食料が無駄に捨てられている現状もあります。食べるものを減らす選択をする前に、私たちができることはたくさんあると思います。

質問:海洋保護区の有効性は7−8年前から言われていたと思います。保護区のネットワークは広がっているのでしょうか? 広がっていないならその理由は何でしょうか?

回答:ロバーツ氏
海洋保護区は、8年前に比べて大きく発展しています。2002年の国際サミットで沿岸をもつすべての国に海洋保護の目標値が設定されました。しかし、各国政府の取り組みは消極的で、目標値の最低ラインをクリアするつもりで海洋保護区の設定を考慮しているような状態です。ミクロネシア諸島が30%の海を海洋保護区にすると宣言したように前向きな国もあります。

回答:ピキッチ氏
海洋保護区は本当に効果があります。科学的にも証明され世界で認識されています。それをもっと求めていく市民の声が必要だと思います。海洋保護区の設立が緊急に必要だと。設立を検討している時間の余裕はありません。このようなシンポジウム開催などは非常に重要だと思います。

回答:ロバーツ氏
海洋保護や漁業管理の現状は、一般の人たちが思っているよりずっと進んでいないことをもっと知るべきでしょう。

質問:海洋保護区のグローバルネットワークの構築とはどういう意味ですか?

回答:ロバーツ氏
グローバルネットワークとは、離れた海域の海洋保護区がお互いに保護しあうことです。生き物の移動や繁殖など保護される区間で共有し、またまわりの漁場にも資源の増加などの影響があります。海洋保護区システムというのもあり、生態系アプローチとして海洋保護区の間を移動する生き物を保護するため、国際社会が協力して海洋保護区を管理するシステムを構築することです。

質問:MSC認証商品をもっとわかりやすく売り場で紹介している事例があれば紹介してください。

回答:山本氏
MSC認証といっても日本の魚種は非常に限られています。イオングループの中でも、ジャスコではMSC認証を自ら貼って販売することができますが、マックスバリューやマイカルではそこで加工したものに認証を貼ることはできませんが、すでに貼ってある認証済みの商品を売ることはできます。そのようにMSC認証商品(MSC商品)を並べる店が日本全国1000店以上はあります。一度、店頭で見ていただければ分かりやすいかと思います。

質問:MSC商品のアラスカサーモンと国産のサーモンと、どちらを買えば水産資源を守ることになるのでしょうか? フードマイレージの問題もありますがいかがでしょうかMSC商品のアラスカサーモンと国産のサーモンと、どちらを買えば水産資源を守ることになるのでしょうか? フードマイレージの問題もありますがいかがでしょうか。

回答:和田氏
専門家ではないので個人的な意見ですが、北海道のサケがMSC認証を取得するとも聞いています。この北海道のサケは3−4割海外に輸出されています。輸出するのにMSCのほうがいい値段がでるわけです。また、日本で養殖されたサケとその餌のフードマイレージと輸入もののサケのフードマイレージをどう判断するか、よくわかりませんが、だた、MSC認証はフードマイレージを保証するものではなく持続可能な漁業を保障するものです。

 
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