15 November
2009

・捕鯨船出港の11月

11月前半は、これまで捕鯨母船の日新丸が南極海に向け日本の港を出発してきた時期です(写真は去年のもの)。私たちはほぼ毎年この出港に立ち会い、南極海での調査捕鯨中止を求めてきましたが、日新丸が沖合に消えていく風景は、日本が国際社会の中で信頼を失っていくことの象徴であり、税金のムダづかいのシンボル。見送っていて悲しくなってしまいます。  

昨年の日新丸は、事前の公式発表もせず、世間から隠れるようにひっそりと出港していきました。しかも同じ年の約半年前には、グリーンピースが内部告発を受け、日新丸の乗組員によるクジラ肉の横流を明らかにしたばかりでした。

 

日本政府が税金を投入する「調査捕鯨」の「副産物」だというクジラ肉を、一部の個人宅などに送ったり、それを黙認したりすることは、納税者に対する裏切り行為のはず。公然の秘密として行われていたこのクジラ肉の横流しの事実が明るみに出てからというもの、南極海捕鯨に携わる関係組織は「土産」について互いにちぐはぐな弁解を繰り返すといった形で動揺をあらわにし、クジラ肉横領の闇の部分を浮き彫りにしました。  

クジラ肉事件について詳しくは

http://www.greenpeace.or.jp/campaign/oceans/whale/t2/t2_html  

そしていま、大量の税金を無駄に投入して天下り先を確保する実態も見え隠れしています。少し前の報道によると、「調査捕鯨」の実施母体である財団法人日本鯨類研究所は、農水省が所管する426もの公益法人のうち5番目に多く補助金などが交付されています(2008年度)。また、3人の 常勤役員のうち2人が国家公務員出身です(08年12月1日時点)。

http://news.nifty.com/cs/headline/detail/fuji-320091102206/1.htm  

http://www.47news.jp/CN/200910/CN2009102001000383.html  

 

私は昨年から、国内漁業の実態を知るためにいくつかの漁港を訪ねてきましたが、そこで出会う漁業従事者の方々と捕鯨問題について話をしていくと、反捕鯨の意見を100%応援することはできないとしながら、「しかしはるばる南極海まで行って、ほんの一部の人間だけが得をするようなことを継続するくらいなら、水産庁は近海にある漁業問題の解決のためにもっと金を使ってほしい、水産庁はなぜそれができないのか」と胸の内を明かしてくれる漁師さんもいらっしゃいました。 
漁師を含めてだれが見ても優先順位が低く、また必要性に欠ける「調査捕鯨」への補助金投入は見直されるべきです。今年も日新丸は、世間の目を避けてこっそりと出港するつもりでしょうか。


Posted by whanaoka at 23:03
06 November
2009

・11月6日、ICCAT開催

マグロの資源枯渇が盛んに報じられているので既にご存知かもしれませんが、11月6日、大西洋クロマグロの資源管理をしている、ICCATという国際漁業管理機関の年次会合が、ブラジルのレシフェで開催されます。

 

今回のICCAT年次会合は、クロマグロ保護が話し合われることがほぼ確実なワシントン条約会議の開催を数ヵ月後に控えており、クロマグロビジネスを継続させたい国々にとっては、ICCATの資源管理能力を示す重要な機会。と言うのも、大西洋クロマグロは寿司や刺身の中心的存在で「本マグロ」と呼ばれる商品価値の極めて高い魚介類ですが、もしワシントン条約の締約国会議で保護の対象となれば、その国際貿易が禁止となります。その8割を消費している日本で「もう食べられなくなる」「一層高嶺の花になる」と報道される所以です。

 

ICCATの科学委員会は、大西洋クロマグロの資源状態はワシントン条約で保護されるに相当するものだとし、10年後にワシントン条約から抜けるためにはICCATの管轄下による一時禁漁が必要であることを示しています。グリーンピースもワシントン条約による保護が必要としていますが、ICCAT年次会合にも代表団を派遣していて、地中海にある産卵海域を海洋保護区にすること、海洋保護区の周りで科学委員会の提案に則った持続可能な漁業をすること、科学的知見に基づいた漁業管理ができる新しい管理体制を作ること、その3つが実現するまで禁漁とすること、などを求め活動しています。

 

私は寿司も刺身も大好物です。グリーンピースに入る数年前、マレーシアのジャングルの向こう側で生活していたときは、一時帰国をするとトロや赤身をお腹いっぱいに食べて美味しさと懐かしさに感動していました。ですが、子供が将来食べられる魚介類がどんどん無くなっていってしまっているほど親である私達が海から魚を獲りすぎている現実を知ってからは、それを数年前まで知らずに間接的に過剰や違法な漁業を手助けしてきたことに、胸に刺さるものを感じています。らりるれろがまだしっかり発音できずに「まぐよ」と言って練りわさびの箱に載る赤身の写真を指さす幼い息子を見ていると、魚食の中心的存在であるクロマグロが資源枯渇してしまわないよう、しっかりと保護していく義務を感じます。これまでを省みれば、高嶺の花になることは残念だけど当然のことなのかもしれないし、次の世代に継ぐのなら守るのは今しかないとも思います。声を上げながら、まずはICCATからワシントン条約までを、じっくり見守っていきます。



そして、大西洋クロマグロを過剰漁業から保護することによる環境負荷のしわよせが、既に多くの漁師が漁獲量の減少を訴えているもう一つのクロマグロ、日本海を回遊する太平洋のクロマグロにこれ以上来てしまわないことも願っています。


Posted by whanaoka at 22:47
10 July
2009

・巻き網で獲られたクロマグロの水揚げ

世界のあちこちで漁業規制の不備による過剰漁業が話題となっています。漁獲のペースが加速し、魚が生まれ育つペースがそれに追いつかないため、海から魚がどんどんいなくなっているのです。このまま過剰漁業が続けば2048年には世界の海から人類が魚を獲り尽くすというボリス・ワームらのシナリオは既に日本でもよく耳にします。私達の世代が知らないうちに海の幸を獲りすぎ食べすぎていて、そのことにより私達の子孫が美味しい魚を食べることができなくなるなんて、不本意ですよね。漁業を持続可能なものにするきちんとした政策と管理が、世界の海でも日本の海でも求められています。 


先日、マグロ水揚げ日本一を謳う境港を訪れました。美味しい地元の魚を堪能した翌日の7月8日、早朝から活気に満ちた港で、1,000本を越えるクロマグロが次々と水揚げされ、素早くエラや内臓を処理され、入札されていく迫力のシーンに遭遇しました。


聞けばこの時期この港に水揚げされるクロマグロは、日本海を北上する過程で産卵期が近づくと密集するクロマグロの習性を利用し、海の中が手に取るように分 かるという高性能のレーダーや魚群探知機などの最新機器で産卵直前の魚群を見つけ出し、大きな網で群れをぐるっと囲み一網打尽にする「巻き網」という漁法 により獲られているのだそうです。


水揚げされたクロマグロのサイズが気になりました。港に揚げられるのは、昨年大間の一本釣り漁船に乗せていただいたときに見たクロマグロの半分にも満たない小ささ。初めて産卵をする年齢の魚や、まだ数回しか産卵をしたことのない年齢の魚ばかりと思われます。その多くの腹の中には、腕の太さほどの真子(まこ・卵巣)が2つ。つまり子孫を海に残すことのないまま獲られたということです。



それにしても大きいマグロは何であまりいなかったのかな?





クロマグロは世界の海で激減が深刻視されていますが、それにもかかわらず日本のEEZ内でのクロマグロ漁の規制は事実上皆無。そこに泳いでいるものをほとんど獲れるだけ獲っていいのです。この港での光景を目の前にして単純に、「こんなことがいつまでも続けばそりゃー近い将来マグロも食べられなくなる」と納得しました。例えば、せめて産卵期は禁漁にするとか、大きいサイズのマグロしか獲らないとか、少なくともなんらかの規制がなくてはクロマグロの生存量は減少するばかりですよね。


また消費者として、こういう現状を全く知らされないことに疑問を感じました。皆さんは、普段購入する食材がこんなに分別なく自然界から粗獲りされているなんてご存知でしたか? 


今回はたまたま日本の港でマグロの水揚げに遭遇しましたが、世界の港ではマグロに限らず多くの魚種で同様のことが起きています。


「フィッシュ」と言える様になった幼い息子が私の年齢に達したときも寿司屋に行けば美味しい本マグロが食べられ、港町を訪れれば美味しい地元の旬の魚を味わえるように、僕達は今どうしなくてはいけないのか、どうしていくことができるのか、改めて切実に考えさせられる旅でした。


写真上から:

1:水揚げ ・ 2:処理 ・ 3:入札 ・ 4:腹の中から取り出した真子 ・ 5:腹の中から取り出した真子 ・ 6:真子


Posted by whanaoka at 15:08
28 May
2009

・南太平洋諸国が海洋保護区設立へ大きな一歩

南太平洋諸国が海洋保護区設立へ大きな一歩

 

「海洋保護区」の波が各地で大きくなってきています。

 

「海洋保護区」とは簡単にいえば、海の一部で漁業や開発を禁止することによってそのエリア内の環境を守り、同時にそのエリアから外にあふれ出る生物を獲ることによって漁業の持続性を確立しようというもの。世界の海を守るにはまだまだ足りませんが、ニュージーランド、ハワイ、フィリピン、イギリスなど各地で設立されていて、周辺海域の漁師からも保護区の存続を支持する声が聞こえてきます。そんな中、世界の海洋保護を引っ張る頼もしいニュースが南太平洋から飛び込んできました。

 

南太平洋に浮かぶニウエの首都アロフィで5月20日まで開催されていた第5回水産委員会閣僚フォーラム(Ministerial Forum Fisheries Committee)で、島嶼国(パプアニューギニア、ソロモン諸島、ツバル、ニウエ、パラオ、バヌアツ、フィジー、ナウル、キリバス、クック諸島、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島、サモア、トンガ、トケラウ)とオーストラリア、ニュージーランドの大臣らにより、島嶼国に囲まれた4つの公海を2010年内に禁漁区にするという画期的な提案が合意されました。「公海ポケット」または「ドーナツホール」と呼ばれるこの4つの公海は、言葉では説明しにくいですが、以前にもこのブログで紹介した地図のオレンジ色に塗られた4つの海域のこと。


 


この太平洋島嶼国に囲まれた公海では、アメリカ、EU諸国、中国、日本、韓国、台湾、フィリピンなど漁業大国から船が集い、違法な漁業や過剰な漁業が盛んに行なわれている現状があります。たとえば、マグロ類は世界供給の半分以上が太平洋からのものですが、とくにこの海域を回遊するメバチマグロやキハダマグロは過剰漁業が深刻化。私たちがふだん食べるマグロも、そのような海域から漁獲されたものかもしれませんね。今回の禁漁区設置案は、「マグロが食べられなくなる」ことを防ぐ具体策としても、この海域を囲む島嶼国はもちろん、主要漁業国や、この海域で漁獲されるマグロ類の多くを消費する日本にとって、長期的に大きな利益につながるものでしょう。

 

漁業が盛んな北半球の国々と、豊かな漁場がある南半球の国々が太平洋の漁業管理について年に一度集う会議のひとつに、中西部太平洋マグロ類委員会(WCPFC)があります。もちろん日本も加盟しています。私もオブサーバー参加した昨年のWCPFCでは、この4つの公海のうち2つで2010年頭から巻き網漁を禁ずることが合意されました。グリーンピースは今年末に開催されるWCPFCで、この4つ全ての海域を禁漁区にする提案が加盟諸国により強くサポートされることを望んでいます。

 

漁獲対象種の小型化や漁獲量の減少、そして毎年1万人規模に達する漁業者数の激減が問題視されている日本国内でも、公海管理の動きと同様に、おいしい魚を末永く食べられるように、「海洋保護区」のコンセプトを取り入れた海の環境と漁業の持続性を守る、水産管理体制を確立させるときに来ているのではないでしょうか。


Posted by whanaoka at 17:49