11 April
2008

・日本捕鯨協会会長への反論

今回は、また前回のブログとはずいぶんトーンが変わりますが、少し前に朝日新聞に掲載された日本捕鯨協会の中島氏の「私の視点」への投稿記事に対するグリーンピース・ジャパンの反論を載せます。


2月26日の朝日新聞「私の視点」に、日本捕鯨協会会長を務める中島圭一氏の捕鯨問題に関する意見が投稿された。これは、当団体事務局長である星川淳の「私の視点」(1月31日掲載)に対する反論の体裁をとっているため、ここでグリーンピース・ジャパンとして中島氏への反論を示しておきたい。

中島氏は日本の捕鯨業界について、持続的なクジラ利用を推進してきた優等生であり、欧州やオーストラリアなどの国々から理不尽にいじめられているかのように書いているが、これは客観的な事実とは異なる。

日本の沿岸捕鯨業は、20世紀の初頭になって、それまでの地域に根づいた伝統的捕鯨から、より大きな資本を投入し、ノルウェー式捕鯨砲を備えた動力船で、漁場を次々に移していく近代的捕鯨業に取って代わった。これによって日本近海での乱獲が始まり、シロナガスクジラ、ナガスクジラ、イワシクジラと、大型のクジラから次々に数が減っていったのだ。現在も個体数は回復していない。1970年前後からは、義務づけられた計測時にクジラの体長や性別のごまかすなど、監視
の目を欺いてクジラを獲り続けたという捕鯨従事者の証言も残っている。南極海での遠洋捕鯨については、1987年に商業捕鯨を停止するまで日本は欧州各国とともに乱獲を続けた。沿岸、遠洋を問わず近代捕鯨の歴史は、伝統捕鯨のそれとはまったく違い、持続的利用とはほど遠い乱獲の歴史にほかならない。

また同氏は、オーストラリアを含む反捕鯨国があらゆる捕鯨に反対しているとし、反捕鯨国が感情的で話し合うことのできない国だというイメージを誇張している。これは日本のメディア全般でも見られる論調だが、実際に国際捕鯨委員会を傍聴してみれば、やはり事実とは異なることがわかる。たとえば、先住民のための捕鯨枠に関しては、オーストラリアやニュージーランドをはじめとする反捕鯨国も同意しているし、欧州の国々でもオランダやスイスなどは、どちらかといえば中立の立場に近い反捕鯨国だ。もし日本が本気で商業捕鯨を再開するつもりなら、そのような国々と交渉を続ける必要があるが、実際には行なってきていない。これでは、「反捕鯨国が話し合えない国だから話し合う必要もない」と、問題解決を引き延ばしているとしか思えない。

さらに、同氏は来る食糧危機にそなえて南極のクジラを利用しなければいけないという。そもそも、食糧危機は地球温暖化などの環境の変化がその原因のひとつである。本当に食糧危機になったときに、南極の生態系だけは健全で大いに活用できると考えることがおかしい。また南極のクジラだけでは、世界規模で起こる食糧危機を救うことはできない。食糧危機の回避には、日本国内の農業、経済的排他水域内での水産業などの復興によって自給率をあげる地道な努力が必要だ。

そして同氏は、日本の調査捕鯨の科学性がIWC科学委員会で評価されていると主張するが、同委員会の評価レポートには、日本の調査捕鯨が解明を目指した4つの目標いずれも達成できていないことが明確に書かれている。たとえばミンククジラの自然死亡率にいたっては、結論として「(日本の)分析では(致死率が)0である可能性も含まれてしまう」、つまりミンククジラが死なない可能性まで除外できないとされるお粗末な科学調査なのである。本当にこのレポートが日本の調査捕鯨の科学性を評価していると考えるのなら、ぜひ日本鯨類研究所や日本
捕鯨委員会のホームページで全文の日本語訳を掲載してほしい。日本が税金90億円を投資し、18年間にわたって計7000頭近くのクジラを捕獲した成果を、正々堂々と発表すべきではないか。

最後に、IWCには日本の捕鯨を支持する国が半数程度あると同氏はいう。IWC参加国と日本からの水産無償資金協力の受領国との関係を見れば明らかだが、それらの捕鯨支持国は、日本から水産無償資金協力という政府開発援助(ODA)を受けることを条件にIWCに参加しているとみられる。去る3月8日にも、ソロモン諸島のデリック・シクア首相が、「日本政府から日本側による旅費負担を条件に(IWC中間会合)への出席を求められた」と発言している。半数程度あるとされる日本への支持は、ODAの資金によって維持されているにすぎない。

日本が、本当に「持続的な捕鯨」(ちなみにsustainableは生態学的な原義を含む「持続可能な」と訳すほうが正確)を目指すのなら、国際的な信頼回復の必要性は明らかであり、国際的な交渉の場でその努力をしなければならないのに、交渉の努力をするどころか、わざと問題をこじらせているようにすら見える。

信頼回復には具体的な提案と実行が必要だろう。たとえば南極での調査捕鯨をいったん中止し、ロンドンでの国際捕鯨委員会(IWC)中間会合でオーストラリア政府が提案した「国際的な非致死的調査」を、他国と共同で行なってはどうか。

その上で、もし日本が20年間も行なってきた致死的調査のデータの蓄積が効果的に活用されるようなことがあれば、日本の信頼は大きく回復するだろうし、結果によっては現在のIWCの機能不全を打開できるだろう。また今年開催されるG8で、日本政府は地球温暖化による南極域への影響を調査すると宣言してみてはどうか。

環境立国日本の誇る科学技術をもって、環境調査のリーダーシップを取ってもらいたいものだ。日本は、捕鯨に関して現実とかけ離れた原理原則論を声高に叫ぶのではなく、21世紀の環境政策に見合った前向きな実効性のある施策へと発展させてほしい。


Posted by jsato at 15:15
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