クロマグロがトラやオランウータンと同等の絶滅危惧種に?――2010年3月13日から25日まで開かれるワシントン条約第15回締約国会議の目玉は、大西洋クロマグロ(本マグロ)の国際貿易の禁止について。私たちが普通に食べているマグロも海洋に棲む「野生生物」ですが、長年にわたる乱獲と過剰漁業が原因で、いま大西洋のクロマグロが激減しています。
私たち日本人の多くが抱く2つの疑問を紐解くことで、ワシントン条約の先にある漁業や魚食と私たちの暮らしとのかかわりについて考えていきます。
疑問1: ワシントン条約の附属書記載によって、もう本マグロを食べられなくなるの?
疑問2: 本マグロを皮切りに他の魚も次々と規制され、食べられなくなるの?
正式名称は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」といい、野生動植物の国際取引の規制を輸出国と輸入国とが協力して実施することにより、絶滅のおそれのある野生動植物の保護を図ることを目的としています(外務省・条約翻訳文より抜粋)。2009年10月現在、日本を含む175カ国が加盟しています。
Q2: なぜいま、大西洋クロマグロの国際取引の禁止が話し合われているの?
大西洋クロマグロの漁業は、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)が管理しています。ところがこの機関は、管理機能の不全がこれまでも幾度となく問題視されており、いまだに違法漁業や過剰漁業を規制することができていません。その結果、海の中では乱獲が進み、大西洋クロマグロは激減。乱獲を加速させる要因の一つが国際市場の需要の高さにあることから、この大西洋クロマグロを資源枯渇させないために現在、禁輸措置が注目されています。
大西洋クロマグロの漁業管理を行うICCATの科学委員会、国連食糧農業機関(FAO)の諮問委員会、そしてワシントン条約(CITES)事務局といった3つの専門機関がすべて、いまの大西洋クロマグロの資源状況がワシントン条約附属書Tに掲載するにふさわしいレベルまで落ち込んでいるとの見解を表しています。
Q4: 大西洋クロマグロを守るにはどうすればいいの?大西洋クロマグロは夏になると地中海に群れて産卵しますが、この群を一網打尽にする大規模な「巻き網漁」が、主に地中海沿いの主要漁業国によって行われ、乱獲を加速させてきました。まずは違法漁業や過剰漁業を根絶させること、そして産卵海域など大西洋クロマグロの生態系にとってとくに重要な海域を海洋保護区に指定し、親魚や幼魚を乱獲から守ることが急務です。ワシントン条約による禁輸は、大西洋クロマグロの個体数が回復し、ICCATが適切な漁業管理をできる機関に生まれ変わる時間を与える措置として注目されています。
Q5: 日本政府の対応は?大西洋クロマグロの漁獲量の約8割を輸入する日本の政府は、もしこのたびのワシントン条約締約国会議で大西洋クロマグロの禁輸が決まった場合、「大西洋クロマグロはワシントン条約ではなくICCATが管理すべきである」ことと、「他の食用魚にも規制がかかる可能性がある」ことを理由に挙げて「留保」する、つまりワシントン条約に縛られずに貿易を続けると主張しています。
では、どうすればいいの?大西洋クロマグロの国際貿易を禁止し、地中海の漁業国(輸出国)も日本(輸入国)も従うことで、個体数の回復と漁業管理機関の改革を急がなければなりません。日本政府の主張どおり、大西洋クロマグロの漁業管理はICCATが行うべきもの。大西洋クロマグロの個体数を回復させ、ICCATが適切な漁業管理をすることができる機関に生まれ変わる時間をつくるためにも、ワシントン条約による禁輸措置の実施が効果的です。
大西洋クロマグロ以外にも、ミナミマグロや中西部太平洋のメバチマグロなど複数のマグロ種が乱獲され、激減しています。日本の周りの海でも、大間の一本釣りマグロなどで有名な太平洋のクロマグロの巻き網による被害が問題となっています。また、マグロに限らずたくさんの魚種が世界の海で乱獲されており、FAOによると世界の水産資源の8割近くが満限利用ないし過剰漁獲の状況にあります。魚が食べられなくなる未来が来てしまうとしたら、その原因はワシントン条約による貿易規制ではなく、漁業の持続可能性と生物多様性の保護を無視した乱獲にあります。水産業界の利益ではなく、海の生物多様性の保護や漁業の持続可能性を優先させる管理の構築が急務です。
学者、漁師、流通業者などそれぞれの立場から、国内各分野の専門家が声を挙げています。
三菱商事
「大西洋・地中海クロマグロに関する声明」 (2009年9月)
リンク先をご覧ください
http://www.greenpeace.or.jp/press/releases/
pr20091109oc_html