CRIIRAD:Commission de Recherche et d'Information Independantes sur la Radioactivite(放射能に関する情報および独立調査のための委員会)
1986年、チェルノブイリ原子力発電所の事故から放出された放射性物質のヨウ素131とセシウム137による汚染が、フランスにまで達しているという事実をフランス政府が隠蔽していたことが発覚、フランス国民はこの突然のニュースに驚いた。そして同年、政府から独立した原子力調査機関としてCRIIRAD研究所が設立された。
CRIRAD研究所はガンマ・スペクトロメーターを3台、液体シンチレーション分析器、およびポータブル放射能測定装置を保有している。
1988年から1997年にかけてCRIIRAD研究所は、チェルノブイリ原発事故によるフランスのセシウム汚染を示す汚染分布図を作成した。
1996年から1998年にかけてCRIIRADは、アルプス山脈から採取した表土サンプルがチェルノブイリ原発の死の灰(放射性降下物)によって放射能汚染されていることを検知した。
1990年から1994年にかけてCRIIRAD研究所は、ローヌ川の川底の堆積物を採取した結果、マルクールにあるフランス原子力庁(CEA)/COGEMA社の核燃料再処理施設からの放射性排水によるプルトニウム汚染を検知した。
アヴィニョン市議会の依頼を受け、マルクール核施設周辺の地下水がトリチウム汚染されていることを検知した。
1992年から1994年にかけてCRIIRAD研究所は、リモザンとロワール・アトランティック県のCOGEMA社のウラン鉱山が放射能汚染している事実を立証した。これらの調査も自治体の要請の下行われた。
1994年から2000年にかけてCRIIRAD研究所は、フランス、ラ・アーグにあるCOGEMA社のラ・アーグ核燃料再処理施設周辺の環境調査を実施した。この調査活動はグリーンピース・フランスおよびグリーンピース・インターナショナルからの資金提供を基に実施された。
1994から1995までCRIIRADはCOGEMA社のラ・アーグ再処理施設周辺のコケ類から、ヨウ素129(半減期1,570万年)およびセシウム137を検出した。当時COGEMA社は大気、牧草、牛乳など環境のヨウ素129による汚染値を公表しなかった。また、再処理施設から環境中に放出されるヨウ素129の排出値も公表しなかった。
CRIIRADはCOGEMA社による環境への放射性物質の放出を厳しく批判した。 幾つかの核種については、COGEMA社の再処理施設から放出される認定許容範囲内の放射能放出量が、全世界の原発から放出される放射能の合計に等しいほどの量であることを確認している。COGEMA社は大気中に実際に放出されている重要な核種、すなわちヨウ素129や炭素14の排出値を公表しなかった。
主要な核種(クリプトン85、トリチウム、炭素14、ヨウ素129)は大気中に気体として放出された、ところがCOGEMA社とフランス政府規制当局は大気中の塵の放射能値だけしか測定しなかった。再処理施設周辺の住民には、毎日呼吸している大気が放射能汚染されていることはまったく知らされなかった。
1997年3月、グリーンピース・フランスの依頼に基づいてCRIIRADチームは、COGEMA社の核燃料再処理施設から海中へ放射性廃液を放流するための排水管付近の海岸から高レベルの放射能を検出した。検出された値は1時間あたり300マイクロシーベルトで、これは自然界の放射能値の3千倍である。CRIIRADとグリーンピースは市民の安全のために、特に干潮時の海岸への立ち入りを禁止するよう関係機関に働きかけている。
1998年から2000年、CRIIRADの専門家は「北部コタンタン半島における白血病に関する新しい疫学調査と放射線・生態学調査のための科学委員会(NCRG)」(1998−1999)に参加した。
『1978年から1992年にかけて、ボーモン−アーグ(Beaumont-Hague)地区の若年層(0歳〜24歳)に異常に高い白血病の発生率が確認されたことを受けて、1997年に地元の魚介類や人々の海岸の訪問との関連が指摘された結果、市民は当局に詳細な調査の実施を要請した。』
この調査に携わった専門家たち に課せられた課題は、住民の被爆量とそれがもたらす健康被害を予測することであった。具体的な目標は核関連施設に起因する白血病の理論的症例数を検討することだった。
1999年7月、NCRGが最終報告を発表する数日前、CRIIRADはNCRGに対して調査はまだ不充分なので結果の発表は控えるべきであるとの提言をしたが、意見が対立、結果NCRGを脱退した。NCRGが調査に用いた公式基準が、瞬間的に外部からの大量の放射線に曝露された広島と長崎の原爆生存者から得られたデータを基準にしているのに対して、再処理施設周辺の住民は長期間にわたって外部からのみならず、食品を通じて体内からも低レベルの放射線に曝露されることから、この調査からは充分に信頼性のあるデータは得られないとCRIIRADが主張したことが対立の焦点であった。CRIIRADはフランス環境省にこのような「科学性に欠ける」調査結果を受け入れないように進言する書簡を送った。
一方、COGEMA社はこのNCRG報告結果を利用し、ラ・アーグの再処理施設は「健康に被害を及ぼすものではない」ことを一般に浸透させるためのPRを展開した。COGEMA社は1999年から2000年にかけて再処理施設の処理能力拡大と施設の運営維持基準の変更を申請したが、これを支持する専門家すらいる。CRIIRADはフランス政府に対して、この申請はそもそも違法であり、データには誤りや情報の不足があることを指摘した。