プルトニウムMOX燃料―核兵器への転用が可能なプルトニウム
グリーンピース ブリーフィング資料(2002年6月27日作成)
英国核燃料会社(BNFL社)は、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料に含まれているプルトニウムは核兵器級でないとしている。しかし、IAEAは核兵器への転用可能としている。
- プルトニウムが核兵器級であるか、原子炉級であるかは、含まれている低純度のプルトニウム同位体の量によって決定される。例えば、米国の基準では、プルトニウム試料中のプルトニウム239の含有量が93%であれば、核兵器級とされる。
- 一般に原子炉級のプルトニウム中の、プルトニウム239の含有量は60%までで、残りはプルトニウム240、プルトニウム241、プルトニウム238で構成されている。しかし、低純度のプルトニウムでも核兵器を作れる。1994年の6月、米エネルギー省長官のヘイゼル・オリアリーは、1962年に行われた核実験では、原子炉級のプルトニウム(BNFL社製)を使ったことを公表した。
- U.K. HANSARD (公式議会記録)1994年7月
英国防省エイケン氏:「1962年に米国が、英国起源の原子炉級のプルトニウムを使った核爆発実験を実施した事実を、米エネルギー省長官が6月27日に発表したことについて、当省に対して打診がありました。(中略)1962年の実験は原子炉級のプルトニウムであっても、核爆弾を製造することが技術的に可能だということを証明しました。米国によってこの事実の機密解除がなされたのは、1977年です。ただし、原子炉級のプルトニウムを使った核兵器の製造と保管については、技術的な障害も存在します。いずれにせよ、いかなる等級のプルトニウムも厳重に管理するという我が国の政策は変わりません。国際的な核拡散防止の義務に従って、あらゆる種類のプルトニウムは厳重な管理態勢の下におかれます。」
- 1945年に長崎に投下された爆弾に使用されたプルトニウム量は6.1kgであった。核兵器級のプルトニウムを使っていたこの爆弾の爆破力は、TNT2万トンに相当する。プルトニウムMOX燃料に近い原子炉級のプルトニウムをこれに置き換えると、爆破力は約3千5百トンTNTになる。これだけでも、大都市の中心部を破壊する十分な威力がある。
- 「原子炉級のプルトニウムは、いかなる放射性レベルのものであれ、爆発物に使用できる。最もシンプルな型の爆弾の設計においては、原子炉級のプルトニウムを使用するのと、核兵器級を使用するのとではさほどの違いはない。」(米国の核兵器施設、国立ロスアラモス研究所の理論部門の元ディレクター/核兵器設計者 J. Carson Mark氏
- プルトニウムMOX燃料は、IAEAにおいて核兵器に直接利用可能な物質として、分類されている。IAEAの安全規約用語集1987年度版において、プルトニウムMOX燃料から核兵器用プルトニウムを得るのに必要な時間は、1週間から3週間であると記述されている。
- IAEAはプルトニウムMOX燃料に含まれているプルトニウムがいかに核兵器用に転用できるかを示した、“転換タイムテーブル”を作成している。
IAEAによるプルトニウム物質転換タイムの評価[1]
| 原型 | 最終 | 必要日数 |
| プルトニウム金属 | 完成形プルトニウム | 7-10日 |
| プルトニウム硝酸、もしくはプルトニウム酸化物 | 完成形プルトニウム | 1-3週間 |
| 混合酸化物燃料、もしくは粉末 | 完成形プルトニウム | 1-3週間 |
| 放射性燃料中のプルトニウム | 完成形プルトニウム | 1-3ヶ月 |
- 英国王立協会報告書(1998年2月、section 4.2.1)は、「未使用のMOX燃料は、プルトニウムの抽出が比較的容易なため、不法転換に利用される可能性がある」としている。
- 英国王立国際問題研究所の報告書“原子力発電の戦略と将来の見通し”(1994)は、「(中略)[MOXからの]プルトニウムの抽出は比較的簡単な方法で行うことができる。少量であれば、自家用の実験室があれば充分である。」と報告している。
- 米エネルギー省、軍備管理および拡散防止局の報告書“兵器利用可能な核分裂物質の保管と余剰プルトニウムの代替利用の軍備管理及び拡散防止最終評価”(1997年1月、84ページ)は、「(中略)MOX燃料は依然として最も配慮の必要な分類に特定される。なぜなら、核兵器に必要なプルトニウムはそこから比較的容易に分離できる」としている。
- 日本のプルトニウム計画には、核兵器保有国のプルトニウム計画にみられるのと同じような軍事利用のニュアンスが多分にある。
- 2002年6月の福田官房長官の非核三原則見直し発言によって、日本の核兵器開発に関する論争がまた始まった。福田官房長官の発言には、アジア各国から日本との各関連取引を中止せよとの強い抗議の声があがった。
- 米国の下院国際関係委員会の委員長ベンジャミン・ギルマン氏は、1999年の日本へのMOX燃料輸送の安全管理についての懸念を表明していた。ギルマン氏は、「(中略)最高速度13ノットの船は防衛面からみても充分な速度とは言えない上、性能的にも軍用船舶、海上警備船舶に比べてもはるかに劣るものである」と発言している。[2]
- また、米国の原子力規制委員会(NRC)は以下のような表明をしている。「(略)原子炉級のプルトニウムについて言うならば、あらゆる技術レベルにおいてこれを核弾頭に利用することが可能だ。つまり、工業先進国でなくとも、原子力発電所を持つ国であれば、高度な核兵器の開発は可能だ。(中略)もちろん、原子炉級のプルトニウムを使用することによって多少の性能低下はあるだろうが、核兵器の設計によってはその程度の性能低下は取るに足らないものだろう。過去の認識がどうであったにせよ、また、生産能力に対する不確定要素を考慮したとしても、最も簡素に設計された核兵器であってもキロトン級の強力で効果的な核爆弾を製造することが可能であることは、我々の現在の認識である。」[3]
- 2001年の5月にストックホルムで開かれたIAEAの会議に提出された報告書のなかで、国連テロリズム防止部門の責任者アレックス・シュミット氏は、自家製の核兵器を製造できるテロ組織は30あると述べている。1953年以降、550件の核物質の違法輸送がIAEAによって記録されている。このうち370件は違法輸送が行われた国の政府によっても確認されている。ほとんどの事例は、放射能を帯びた金属片など、核爆弾には利用できないものであったが、全体の1割は核兵器級のプルトニウム、もしくは高純度のウランであった。[4]
[1] IAEA安全管理用語集、IAEA/SG/INF/1(ウィーン、IAEA,1980)21頁、L.S.シャインマン博士の“IAEAと国際的核秩序”Resources for the Future 1987,165頁からの引用
[2] “下院委員会日本への核兵器級のプルトニウムの安全対策不備を調査”、NCIプレスリリース1999年2月16日
[3] V.ギリンスキー、“プルトニウム、拡散と政策”NRCコミッショナー、MIT,1976年11月1日、10頁―11頁
[4] 130組織が核武装可と国連が報告”、ロブ・エドワーズ、サンデーヘラルド紙、2001年5月13日
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