
食糧不足や食糧価格高騰の問題は、これまで以上に深刻になっています。おもな原因は工業的な生産システムを取る近代農法、気候変動の影響による生産量の減少、不公平な輸出入取引、バイオ燃料ブームです。このために、世界で8億5000万人が食糧不足に苦しんでいます。
食糧危機の解決にひとつの正しい答えがあるわけではありません。食糧危機が複合的要因によって引き起こされたのだということを理解したうえで、問題解決に取り組むことが急務です。
グリーンピースは飢えに苦しむ世界8億5000万人の人々への緊急援助を強化し、以下の点に本気で取り組むべきだと考えます。

地球環境を守り、食料の十分な配当を可能にする農法は、農地にあるエコシステム(生態系)の生物の多様性を重視した農法です。近代農法と呼ばれる工業的な農法は、私たちの限りある天然資源や食物をむしばんできました。近代農法では農薬や化学肥料への依存が高く、それによって、土壌汚染や水質汚濁などの深刻な環境汚染が広がり、生産量は逆に減少しています。
生物の多様性を重視した農法は多種多様な生き物が共存する環境をつくり出します。いわゆる害虫も益虫によって抑制され、害虫の大量発生が少なくなるので、危険な殺虫剤を使う必要はありません。世界各地の大勢の農家が、有機栽培や持続可能な栽培農法で十分な食物が生産され、食料安全保障が高まると自信を持って伝えています。さらに、自然の力を高め、地域社会や近隣農家同士の環境も向上していると伝えています。
世界銀行(World Bank)と国連の委任で作成された世界で初めての「開発のための農業科学技術の国際的評価(IAASTD)」のレポートでは、農薬や化学肥料に頼った農法や遺伝子組み換えを手段とする農法は食料安全保障を高めない、との明確な見解を示しています。このレポートは世界中の400人以上の科学者達、30以上の政府が参加する政府間機関によって作成されました。レポートの作成者は、企業の推進するエネルギー多消費型農法は、毒性の高い農薬や遺伝子組み換えに頼り、不必要で高額であるために失敗した農法であるとの意見を共有しています。これからのあるべき農業の姿とは、収量がより高く、また質の高い作物を十分まかなえることで低価格を維持し、地元地域環境や自然資源を破壊せず、地元に根付いた社会的・環境的に責任のとれる小規模農法です。

気候変動はこの先さらに予測不能になるとみられ、農業への影響はさらに大きくなるでしょう。食料安全保障が、特に貧しい国に深刻な問題として立ちはだかります。予測できない雨量変化やはげしい気候の変動のために農業は、予期することがむずかしい環境変化に適応していかなければなりません。さらに、これまで主流であった工業的な農業は、肥料の大量使用や、農地確保のための森林伐採によって地球温暖化の原因となる温室効果ガスをたくさん排出してきました。
気候変動に適応するには、生物多様性を重視した農法を行うのが効果的です。世界中の多様な生物が共存する農地は、はげしい気候変化にも耐え、その影響を受けにくいことを証明したデータがあります。一方、遺伝子組み換え作物は気候の変動に敏感です。 遺伝子組み換え植物に挿入された遺伝子は、その植物のあらゆる部位においてつねに起動状態となり、それ以外の制御は効かない。これはちょうど、スイッチが入りっぱなしで全力運転を続けるエアコンに似ており、冬までには息切れしかねない。

多くの国は国内生産能力が十分にあるにもかかわらず、国の補助金制度や海外からの輸入される安価な作物のために国内生産量を落としています。各地域の農家は不公平な農業競争にさらされ、地域農業経済は崩壊した過去をもっています。食糧危機を回避する長期的で効果的な政策は、地域の生産量を高めることが第一です。IMFや世界銀行の作物価格保証制度、補助金、また農業作物に関する関税、貨幣価値がある輸出作物の栽培転換などの政策を見直し、自給率が低い国の農業を不公平な競争環境から守るべきです。

原油価格の高騰が食糧危機に拍車をかけています。化石燃料に依存した現在の作物流通システム(肥料、トラクターなどの農業機械、運送など)が直接的な影響を与えているだけでなく、作物を食料ではなく燃料に使おうとする気運を高めています。
2007年、アメリカは5400万トンのトウモロコシからバイオエタノールを生産し、欧州連合は285万ヘクタールの土地をバイオ燃料のためのナタネ生産にあてました。もしこれらの土地が人の空腹を満たすための食料として生産されていたら年間6800万トンの穀物が生産され、3億7300万人を養うことができたはずです。この量は28のアフリカ最貧国の国民を養える量です。

遺伝子組み換えは食糧危機の解決策となり得ないどころか、食料安全保障を脅かします。
遺伝子組み換え作物の収穫高は減少し、天候によってはその生育にはげしいばらつきを生みだし、栽培に失敗している地域もあります。遺伝子組み換えは世界の自然生物多様性を予想不可能でコントロールできない汚染のリスクにさらしており、1996年以降、216件もの作物汚染が57カ国で報告されています。
世界の遺伝子組み換え汚染レポート2007
農家にとっても政府にとっても、遺伝子組み換え種子が高額で危険であるという観点は変わりません。開発企業はそれらの主要作物(ダイズやトウモロコシなど)の種の特許を取得し、生産や商業化を支配することによって、開発途上国で農業生産供給を独占しようとします。この仕組みは食料の価格を間接的に引き上げる要因であって、貧困や飢餓を救済する結果を生み出すことはありません。
「遺伝子組み換え」によって肥え太っているのは開発企業で、それによって飢餓で苦しむ地域の子どもたちの栄養状態がよくなることはないのです。
2008年IAASTDレポートは遺伝子組み換え作物が、ミレニアム開発目標の達成や世界的な食糧不足を解決にはなり得ない理由として以下のような点をあげています。
これまで行われてきた伝統的な種の品種改良は食糧危機を回避するための長期的な解決策たまに大事な役割を担います。従来の品種改良は、これから起こりうる予測がむずかしい気候変動による干ばつや天候変化などによる生育条件にも対応できるという植物が本来持つ能力を高め、問題解決に大きく貢献するでしょう。
バングラデシュの有機農法で稲を育てるコミュニティ
拡大
「遺伝子組み換え」の推進企業は、これで世界の飢餓をなくすと、その必要性を強調しています。ところが企業は飢餓や栄養失調をなくすどころか、問題の一部になっているというのが現実です。
これらの企業は、ダイズやトウモロコシなど主要作物に特許を取得し、それらの生産や商業化を支配することによって、開発途上国で農業生産供給を独占しようとしています。
「遺伝子組み換え」によって肥え太っているのは開発企業で、飢餓で苦しむ地域の子どもたちの栄養状態がよくなることはないのです。
餓えと栄養失調は、農業には欠かせない土地や水、種子、そして技術や資金などの不足が起こした結果です。
世界の75%の飢餓は、政治的に疎外された農村の人々に起こっています。極端に不均等な農地の分布が、飢饉の原因をつくっています。
現在の世界農業貿易システムの自由化は、南の国々を過酷な状況にしています。
多くの農産物を輸出する経済協力開発機構(OECD)加盟国では、国内の農業部門への毎年の補助金の額が、サハラ以南のアフリカの国々すべての国内総生産を超えています。
補助金による輸出品の値下げと、WTOによって合法化されているダンピング(不当廉売)は、貧しい国々が経済先進国によって無理を強いられるという不公正な農業貿易システムの特徴です。
1970年からほとんどの開発途上国は、累積債務危機に陥り、巨大な金額を返済しなければならない状況になっています。
これら借金を抱えた開発途上国のほとんどは農業国で、債務と利子を返済するための唯一の方法は、農産物の輸出です。しかし、ほとんどの農産物の市場価格は、世界中でここ数年間下降し続けていて、そのため、生産を増やし、より多くを輸出する必要に迫られています。
その結果、生産者は、自身の家族を養ったり、地域市場に出荷するための作物を作ることができなくなり、輸出するための作物となるコーヒー、砂糖、綿などを栽培せざるをえなくなっています。
開発途上国での農業調査では、農業の技術を発展させることは、しばしば無視され、必要とされている資材は減らされ、結果は操作されてしまいます。
多くの場合、小規模な生産者よりも、工業化された農業のために行われているのです。
エチオピアのテウォルデ・エグジアブナー(Tewolde Egziabher)博士は、遺伝子組み換え、生物多様性、遺伝子特許などに関する多くの国際会議で、開発途上国の立場を代弁しています。生態学者でもある博士は、「エチオピア環境保護局」の長であり、非営利機関「サステナブル・デベロップメント」を運営しています。今回、遺伝子組み換えの危険性について語っていただきました。
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