印刷用紙やオフィス用紙、新聞用紙など、私たちが日常に使う紙・紙製品は、海外からの資源に多く依存して生産されています。
日本は、紙生産の原料である木材チップやパルプを大量輸入する世界有数の国なのです。輸入される大部分は、原生林(注1)から産出されてきています。
特に、オーストラリアのタスマニア州では、毎年サッカー場9,500個分の面積の原生林を含む森林が破壊的に伐採され、そのうちの90%近くがチップとなって、日本に輸出されてきています。日本で紙や紙製品となり消費されるために、タスマニアの森林生態系が破壊されているのです。
オーストラリア本土の南東に位置する小さな島、タスマニア州には、降雨量が多く植生豊かなレインフォレスト(注2)がひろがり、樹齢数百年で高さが90m以上にもなる樹木のオールドグロス林(注3)が存在しています。これら森林は、地域の気候調節の役割を担い、多様な野生生物の生息地として、その生態系を支えているのです。
更に、タスマニアの森林は、
などの点で、様々な専門家や公的機関によって、これら森林の価値がすでに認識されています。
タスマニアの森林には、樹齢100年以上の大木にできる穴や窪みを棲みかにしたり、樹冠に巣を作るなどして、生態系の一部として生息する下記のような特有の野生生物が生存しています。
タスマニアには、1982年に世界遺産に登録された「タスマニア原生地域」がありますが、保護されているのは山岳地帯で標高が高く気温が低い地域であるため、実際には、その周辺である登録外の地域に、より生物多様性に富んだ森林が存在しているのです。しかし、その生態系豊かな森林地域は全く保護されていないどころか、伐採企業による破壊が進んでいます。
タスマニアでは、毎年22,000ヘクタール(公有地12,000ヘクタール、私有地10,000ヘクタール)もの面積の森林が伐採されています。伐採される面積の半分以上は、公有地に存在する森林です。世界にわずかに残る貴重な森林生態系の一つであるタスマニアの森林で、その生態系管理を全く無視した大規模な皆伐が行われているのです。そして、伐採跡地には紙生産向けに適したユーカリの単一樹種が植えられ、植林地へと換えられていくのです。
タスマニアでの森林伐採のほとんどは、タスマニアの伐採企業ガンズ(Gunns)社によって行われています。木材チップを産出するために、これまで伐採されずにきた樹齢数百年の樹木を次々と伐採し、山の斜面の広大な面積を丸裸にして、もとの生態系が回復不可能な状態にまで破壊しているのです。
大規模な皆伐後には、更なる破壊的行為が行われています。伐採跡地に、上空からヘリコプターでナパーム弾のようなものを投下し、のちに植林を行うために跡地を焼却するのです。このため、生息していた野生生物は、生息地を失うばかりでなく、別の土地へ逃れる機会を失い、更なる生存の危機にあうのです。
更に、跡地が焼却された後には、「1080」と呼ばれる毒が注入されたニンジンがばらまかれています。ワラビーやポッサムなどの野生生物が、植林の芽を食べないようにするためです。植林を効率良く成長させるために、この毒入りのニンジンを食べさせて野生生物を殺していくのです。
こうして、かつて多様な生態系を育んでいたタスマニアの森林は植林地帯へと転換され、更なる紙生産の原料向けに、成長の早いユーカリの単一樹種が植えられていくのです。数百年以上かけて育まれてきた多様な森林生態系とは全く異なる、単一樹種の植林地帯がタスマニアに広がってきています。伐採前に存在した多様な森林生態系を数十年で取り戻すことは、不可能です。
現在タスマニアでは、主に下記の地域で伐採が進んでおり、数年後には、オールドグロス林を含むこれら原生林の姿が消失していく危機にあります。
これらの地域は、タスマニアの住民の声を反映して作成した“タスマニア・トゥギャザー・フォレスト(Tasmania Together Forests)”という地図(A)で保護されるべき地域として取り上げられている指定保留地域です。また、地図(B)には、2005年までに伐採が予定されている地域が記されています。まさに、タスマニアの人々が保護すべきと考える森林で、数年後に伐採されていく計画があります。
地図A:”タスマニア・フォレスト・トゥギャザー“指定保留地域(緑色の部分)
地図B:2005年までに伐採が進められる地区(▲と□で示す部分)
タスマニアでは、すでに多くの人々が伐採企業や州政府に対して、保護すべき価値のある、森林(上記地図Aで示す地域)で伐採を直ちに停止すべき、と意思表示しています。また、森林生態系の破壊のみならず、海岸沿いの環境への影響や、養殖などの漁業への影響に対する懸念の声も上がってきています
こうしたタスマニアの環境破壊は、破壊的伐採を続ける伐採企業の責任のみならず、このような伐採を許可し続けているタスマニア州政府にも、重大な責任があります。

そして、紙生産のために、破壊的な伐採から産出された木材チップを大量に輸入する日本の製紙企業にも多大な責任があります。
すでに日本国内では、古紙を利用した再生紙や再利用製品の生産・購入が可能であり、持続可能な森林経営としてFSC(注4)の認証を得た原料から作られる認証紙の生産も始められています。このように紙・紙製品の生産において、森林資源の利用方法が考慮されている中で、タスマニアの森林破壊の問題は、無視できるものではありません。私たちグリーンピースは、タスマニアの森林破壊を止めるために、下記を主張します。
家庭やオフィスなどで紙・紙製品を消費している皆さんにも、できることがあります。
グリーンピースは、世界に残るわずかな原生林での商業伐採を段階的に廃止し、FSCの基準に沿って認証を得た森林、もしくは短期的対策として、生態系に配慮して管理された国内人工林など、合法で適切に管理された森林からの林産品利用へ代替的に移行していくよう主張しています。
* 用語解説
(資料提供:The Wilderness Society*)
*The Wilderness Societyは、オーストラリア国内の自然保護のために地域レベルで活動する、オーストラリア最大の非営利の環境擁護団体です。私たちグリーンピースは、オーストラリア国内だけに留まらないこのタスマニアの原生林破壊問題に関して、情報交換を行っていくと同時に、The Wilderness Societyの活動を支援しています。