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Greenpeace

バリのパラドクス

レミ・パーメンティア
グリーンピース・インターナショナル政治部 部長
2002年6月11日

先週バリ島で開かれた貧困と環境破壊の撲滅に関する会議では、シェラトンとヒルトンという高級ホテルが各国政府代表を迎える場に選ばれたが、この会議でつじつまに合わない点はこれだけではなかった。

3ヶ月足らず先の2002年8月のヨハネスブルク・サミットの準備会議として国際連合が主催したバリ会議は、少なくとも3つの点で根本的パラドクスを抱えていた。

バリのパラドクス1:失敗は成功の元

バリでは、代表を送った173ヵ国の間でコンセンサスに達しなかった。10年前にリオ地球サミットで誓った約束を、各国政府が守れなかったことは誰の目にも明らかだ。だが、実に弱腰の内容に関してコンセンサスに達しなかったことは、それが承認されていた場合よりもはるかにマシな成果と言える。

バリ会議は、元インドネシア環境大臣のエミール・サリム地球サミット準備委員会議長が事前に作成した「行動計画」草案を中心に進められた。「行動」の大部分は削除されたにもかかわらず、それは「行動計画」と呼ばれた。

その弱い内容にもかかわらず、国連の官僚と多数の政府は、この文書の採択を目指して活発な活動を繰り広げた。議長案が否決された場合、「失敗」と見なされるという理由で、国連職員らは最後の瞬間まで、否決の可能性を非現実的で無責任だと考えていた。

それに対し、非政府組織(NGO)はその弱い合意内容には反対だった。実施に関する明解な目標も日程も十分な手段も盛り込まれず、総体的に2000年12月に国連加盟国が採択したヨハネスブルクに関する国連総会委任内容に従っていないとして、NGOは議長案を批判した。

最大の問題は、サリム議長の八方美人的姿勢にあった。その結果、草案はあらゆる方面が満足する「最大公約数」を表現するに終わった。事前に、明解な目標にも「いかなる」拘束力のある日程にも反対することを米国が発表したため、それらは議長案に盛り込まれなかった。言い換えれば、サリム議長は「事を荒立てない」というアプローチを選んだのである。それはその場を取り繕うにはいい考えかもしれないが、現実の行動計画を立てるには適切とは言えない。

交渉が決裂した金曜の夜、持続可能性を促進する計画が合意されなかったことを知り、もちろんNGOも残念に感じた。だが、同時に、バリの「失敗」は、ヨハネスブルクであらゆる選択肢を考慮できるようになったことを意味し、その点では楽観的な雰囲気も流れた。「失敗」が成功の可能性を生んだのである。たとえば、2010年までに新規再生可能エネルギーの割合を15%に引き上げるという提案を議題に上げることが可能になり、政治的意志さえあれば、ヨハネスブルクでそれを採択することも可能になった。

バリのパラドクス2:欧州と米国は世界の他の地域に押しつけている「自由」貿易というお題目を犠牲にする

バリ交渉が決裂した究極の原因は、多国間貿易体制に対する途上国の信頼感を損なうような経済面でのダブル・スタンダードを米国と欧州連合が唱え続けているためだ。

途上国に対しては、WTO(世界貿易機関)の「自由貿易」というお題目に全面的に従うよう要求しておきながら、米国と欧州連合は要注意の経済部門への援助を続行し、米国は最近、それを増額(鉄鋼、農業)さえしている。

開発援助にさらに300億ドルを拠出する(自由貿易に厳密に従うことを条件として)とした2002年2月のモントレーでの公約を繰り返すだけでは不十分だ。米国と欧州連合が必死で善玉役を演じようとしていることは明らかだ。だが、モントレーでの援助パッケージが、富める国々での農業助成金のわずか6分の1にすぎないという途上国からの指摘は、実に的を射たものと言わざるをえない。

欧州連合と米国がそれぞれの非持続的な援助を止め、決まり文句の「公平な競争の場」で競争する真のチャンスを途上国に与えない限り、多国間貿易体制に対する信頼感は崩壊し続ける。数少ない富める国々にとり、2001年11月のWTOドーハ公約を誠実に守る意志を明らかにするための時間はあまり残されていない。ヨハネスブルクで偽善的な援助の中止に同意しない限り、2003年9月にカンクンで開かれる第5回WTO閣僚会議では、シアトルも霞むほどの事態が起こりそうだ。

バリのパラドクス3:リードすることを期待されないリーダーたち

数々の欠陥にもかかわらず、議長案を採択するよう国連官僚がねばった理由の1つは、バリで行動計画が合意されない限り、国家と政府の首脳がヨハネスブルクに尻込みするのではないかと恐れたためだ。

この恐れは、我々の「リーダー」がリードする能力または意志が無いことを認めた証拠なのだろうか。できあいの(それも半煮えの)取り決めがないと顔を出すのをいやがるというのは、いったいどういうリーダーなのだろうか。真のリーダーなら、できあいの取り決めがないことを、実力を発揮できるチャンスととらえるはずだ。自分の代わりに他の人たちが合意してくれた内容にハンコを押すのではなく、リーダーとして先頭に立つまたとないチャンスなのである(そもそも、それこそリーダーの役目ではないか)。その意味で、地球サミットは良いテストの場になる。ヨハネスブルクに来ないようなら、他に誰か真のリーダーを選ぶ頃合いではないだろうか。

あと数日で、欧州首脳はスペインのセビリアでサミットを開催し、カナダのカナナスキスではG8サミットが開かれる。これらの会議から、今後の成り行きが見えてきそうだ。欧州各国は先頭に立つ姿勢を表明するだろうか。ヨハネスブルクでは、もっと強気で行動追求型の役割を引き受けるだろうか(バリでは、交渉の過程で重要な主張が否定されるのを黙認していた)。ヨハネスブルクでの機会を利用し、EU加盟15ヵ国の存在を最高レベルで証明するだろうか。G8のリーダーらはそれに続き、ヨハネスブルクに国家と政府の首脳を送り込むだろうか。ジョージ・ブッシュ、カナダのジャン・クレティエン、小泉純一郎、ヴラディミール・プーチンは、自ら出席し、サミットの結果について責任を持つ準備を整えているだろうか。

バリ会議終了と同時に、地球サミット開催まで残された80日間に、市民社会を動員し、政府に力を与えるため、グリーンピースは「ヨハネスブルクまでのカウントダウン」を開始した。NGOが強く要求しない限り、政府が重要な社会問題に対する対策を真剣に考慮することさえしないというのは、特に目新しい事態ではない。だが、9月11日事件後、首脳らが富める国と貧しい国の不公平と取り組む新たな「世界的取り決め」を約束した今、この状況はあまりに期待はずれと言わざるをえない。

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