2005年5月
グリーンピース・ジャパンでは、米カリフォルニア州の自動車からの温室効果ガス排出規制の取り下げを求める訴訟に業界団体の参加企業として加わっている自動車メーカー5社に質問状を送付、回答をいただきました。
各社の主張は大きく3つの主張論点にまとめることができると考えられる。
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主張 |
1.州が規制を設定することは連邦法で認められていない |
2.気候変動問題は州でなく、全米、世界的に対処すべき |
3.各州での燃費規制は技術の開発を考えると合理的でない |
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トヨタ |
・州には燃費規制の権限はなく連邦政府で取り扱うべき。 |
・各州個別でなく、全米レベル、グローバルで対処すべき問題。 |
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ホンダ |
・自動車からの温室効果ガス排出を規制するのは個々の州ではなく、連邦政府の役割。
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・ひとつの州が取り組んでも、隣接する州から大気が流れてくるような州レベルでの規制では、温暖化防止への有効性に疑問を感じるため、国家レベルで論じるべき問題。
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・州法で燃費規制が可能になると、州毎の規制に応じた複数の仕様の自動車の開発が必要で合理的とは言えない。 |
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日産 |
・連邦法によれば自動車の燃費規制の設定は、連邦政府のみが規制権限を有し、州が係る自動車燃費に関する規制を設けるのは無効。
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マツダ |
・加州の規制は連邦法に抵触する。 |
・地球温暖化は地球規模の現象であり、国家及び国際社会全体で取り組むべき問題。 |
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三菱自工 |
・加州の規制は、CAFE規制と重なり、州独自に規制すべきでない。
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カリフォルニア州は、連邦「大気浄化法」の下で、自動車からの大気汚染物質の排出基準を設定する明確な権限を与えられています。カリフォルニア州の自動車からの温室効果ガス排出規制は、燃費規制ではなく、温室効果ガスという大気汚染物質の規制です。カリフォルニア州は大気浄化法の下でこの規制を導入したのであり、自動車からの大気汚染物質の排出に関する基準を設定することは、燃費規制を定める連邦法に抵触するものではありません。
カリフォルニア州の規制の対象となっているのは、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、ハイドロフルオロカーボンという自動車から排出される大気汚染物質です。これら温室効果ガスは、人々の健康や環境への甚大な悪影響を及ぼす気候変動を引き起こしています。
大気浄化法は、大気汚染物質を、「周囲大気に排出されるあるいは入るあらゆる物理的、化学的、生物的、放射性物質」とし、「公衆衛生や福利に危険を及ぼすことが合理的に予測される大気汚染を引き起こす、あるいは助長する」自動車からの大気汚染物質の規制を独自に設ける権限をカリフォルニア州に与えています。高いスモッグレベルによって起こる喘息や他の疾患と同様に、気候変動に関連して発生する熱波、感染症の増加なども明らかに公衆衛生と福利に危険をもたらします。そして、大気浄化法では「福利」とは、「天気」と「気候」を含む形で定義されています。つまり、天気や気候という「福利」、そして、熱波や感染症の拡大、異常気象による食料減産や水不足など「公衆衛生」に危険を及ぼす、大気汚染物質である温室効果ガスを規制するのがカリフォルニア州の自動車からの温室効果ガス規制です。
また、燃費規制と排出規制は同じではなく、燃費に直接的な関係のない空調設備の改善でも温室効果ガスの排出は減少します。さらに、加州の規制ではクレジットの取引や代替手段の活用なども認められています。
カリフォルニア州の自動車販売は米国全体の12%と最大のシェアを占めるため、これだけで国内排出量に大きな影響があります。さらに、カリフォルニア州の取り組みが他の州に影響を与えてきた歴史を忘れるべきではありません。これまで、ニュージャージー州、コネチカット州、ニューヨーク州、メーン州、マサチューセッツ州などがカリフォルニア州の温室効果ガス以外の排ガスに係る規制を採択し、現在米国で販売されている新車両の4分の1近くが、連邦より厳しい加州の排出基準を満たしています。そして、今回の自動車からの温室効果ガス排出規制はすでにワシントン州で採択され 、オレゴン州でも検討がなされています。カリフォルニア州の温室効果が排出規制は技術の普及にも貢献し、その効果がカリフォルニア州内に止まることはありません。また、2004年の調査では、カリフォルニア州民の81%がこの取り決めに賛同しているという結果がでており、対象市場の殆どがこの規制の実施を望んでいることになります。
連邦政府レベルでカリフォルニア州の規制同等、それ以上の自動車からの温室効果ガス排出規制が制定されれば、それは大きな影響を持つと予測されることから、連邦政府への働きかけをするのは大切だと考えます。しかし、現ブッシュ政権下で短期間にそれが実現することが現実的ではない中で、それを待つことを理由にカリフォルニア州での実質的な対策を進めないのは適切な決定ではありません。また、これまでカリフォルニア州が先に自動車の排ガス規制を制定し、連邦政府レベルでの規制を率いてきた事実を考えると、連邦政府レベルでの自動車からの温室効果ガス排出規制を実現させるためには、カリフォルニア州で規制がしっかりと実施されることが戦略的に効果的であるかもしれません。
そして、連邦政府が排出削減を行わないからカリフォルニア州が行わなくても良いという論理は成立しません。それは、米政府が京都議定書に参加しなくとも、日本が京都議定書の下で気候変動の十分な抑制のために排出削減を行うのが大切であるのと同じです。
カリフォルニア州は、連邦「大気浄化法」の下で、自動車からの大気汚染物質の排出基準を設定する権限があり、他の州は連邦の制度より厳しいカリフォルニア州の基準を適用することを認められています。つまり、排ガス規制は加州だけにその制定の権限が認められているのであって、他の州はどちらかを選択するということになっており、この温室効果ガス規制で各州がそれぞれの基準を設けるというものではありません。そして、実際にすでに温室効果ガス以外の大気汚染物質においては、2つの基準への対応がなされており、今回はその規制対象が温室効果ガスに拡大したことになります。