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グレイ氷河。末端で湖への崩落(氷山の分離)現象がおこって
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南極地域以外では南半球最大の氷塊である、チリとアルゼンチンのパタゴニア氷原から流れる氷河は、地球上の氷河の中で最も速く融解している。ここでは過去7年間、毎年42km3の氷が失われているが、これは東京ドーム3万4千個分の量に相当する。米国航空宇宙局(NASA)とチリの科学研究センター(Centro de Estudios Cientificos)の最新調査 (1) によると、パタゴニア氷河の融解は、今日、山岳氷河に起因する海面上昇の約9パーセントに相当し、その融解速度は増しつつある。
世界中の2,500名を超す科学者で構成される、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第三次報告では、今世紀中に14〜88cmの海面上昇が予測されている。現在、世界人口の約半数は沿岸地域に暮らすと推定されるため、海面上昇は甚大な影響を及ぼす (2) 。海面が1.5m上昇するだけで、バングラデシュだけでも1,700万人の人々が避難を余儀なくされる (3) 。
氷河が減少を続ける原因には、長い間の気温の上昇と降水量の減少にも裏付けられているように、気候変動がある。それでも、こうした要因だけでは、急速な氷河の融解を説明するのに十分ではない。他の要因は、独特の挙動を示すこの地域の氷河の特徴に見出すことが出来そうである。パタゴニア氷河は、いわゆる"カービング(氷山分離)"氷河が優勢である。この種の氷河は、水域にせり出した氷河の先端付近が、接する水との浮力バランスで浮き始め、その部分が崩壊して氷として湖や海に流出していくという特徴がある。このため、全体が常に陸にあって先端部から融けだす陸上の氷河とは異なる挙動を示す。カービング氷河の優勢なこの地域は特に気温の変化への感度が高くなっている。
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パタゴニアのトレス・デル・パイネ国立公園にて 2004年1月
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チリの北パタゴニア氷原とチリおよびアルゼンチンの南パタゴニア氷原は、それぞれ13,000km2、4,200km2の範囲にわたる。アンデス山脈にまたがるこの地域には人がほとんど住んでおらず、険しい地形と厳しい天候が、陸路からの接近をより困難にしている。この地域の降水量は年間2〜11mで、これは年間最大30mの積雪に相当する。この氷原から流れる氷河は、西側は海へ、東側は湖へとのび、その末端で氷塊が水域に崩落する。この氷河の末端(最前部)はほとんど全ての地点で、この半世紀余りの間後退を続けている。
残念ながら、そうした運命をたどっているのは、パタゴニア氷原に限らない。世界的に、気候変動の影響は様々な形で感知されており、科学者らは影響が更に常態化し、より深刻化することを予測している。気候変動は、地球のほとんどの生態系を脅かしており、たとえば氷河、サンゴ礁、マングローブ、北極の生態系、高山の生態系、大草原の湿地帯、野生の草原、あるいは生物多様性の保全を考える際に重要な意味を持つ地域(ホットスポット) などがその顕著な例である。気候変動によって、すべての地域のあらゆる緯度の 生態系において、生物種の絶滅と生物多様性が失われるリスクがますます高まるだろう。また、気候変動は自然に影響を及ぼしているばかりでなく、人間の生活にも計り知れない影響を与えることが示唆されている。
(1)
NASA(米国航空宇宙局)のリリース
チリ科学研究センター
(2)
http://www.ipcc.ch/press/sp-cop6.htm
(3)
「雪氷圏の収支」、ケンブリッジ大学出版局、2004年1月
概要