2004年12月

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環境難民に「箱舟」を!ブエノスアイレス市内でアピールするグリーンピース
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国連気候変動枠組条約第10回締約国会議(COP10)が、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで始まった。今回の会議では、環境面での便益をしっかりと確保した効果的な議定書の実施、温暖化の影響を否応なく受ける途上国への温暖化の影響に対する対策をとるための支援、そして危険な気候変動を防止するために必要な大幅な温室効果ガスの削減を達成する次のステップに関する交渉が大きな焦点となる。

先進工業国は、2020年までに30%、2050年までに70-80%の削減を行う必要がある。そして世界全体では2050年までに50%の削減を達成しなければならない。この目標の達成ができなければ、私たちの後世が非常に不安定な世界で生活していくことを強いることになるだろう。政府、産業界、そして市民社会が今、そしてこれから行う決定は、非常に重要なものとなる。

条約の目的―危険な気候変動の防止

「国連気候変動枠組条約(以下、条約)」は、1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された地球サミットで署名が始まり、1994年に発効した。2004年現在、189カ国が締約国となっている気候変動防止のための国際合意である。条約の究極目的は、「気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼさない水準で大気中の温室効果ガス濃度の安定化を達成する」ことである。そしてそのような水準は、「生態系が自然に適応でき、食料生産が脅かされず、経済発展が持続的に行える期間内に達成されなければならない」。

また条約は、「締約国は、衡平の原則に基づき、かつ、それぞれ共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力に従い、人類の現在及び将来の世代のために気候系を保護すべきである。したがって、先進締約国は、率先して気候変動及びその悪影響に対処すべきである」と規定している。

条約はその名が示す通り、大本となる「枠組み」であり、往々にしてその目標を達成するための補完的な法的文書を持つこととなる。

排出絶対量の削減を定めた京都議定書

条約は、先進締約国の温室効果ガス排出量を2000年までに1990年の水準まで戻すことを目標として掲げていた。しかし、これが拘束力を持っておらず十分でないとの認識から、1995年にベルリンで開催された条約の第1回締約国会合において「ベルリンマンデート」を採択し、これによって1997年までに、期限と拘束力を伴った温室効果ガス削減の数値目標を伴った議定書を作成することを決定し、そのプロセスを開始した。その結果として生まれたのが、1997年の京都会議(COP3)で合意された「京都議定書(以下、議定書)」である。

議定書は、その附属書Bに挙げられている先進工業国に対して、温室効果ガス削減に関する期限を伴った法的拘束力のある数値目標を課している。それは、2008-2012年の第一約束期間までに、先進工業国全体で5%以上削減するというものであり、前述の附属書Bにおいて、それぞれの国が請け負う削減率を明示している(日本は1990年比6%の削減)。

議定書が発効するためには、55カ国が議定書を締結し、かつ批准した先進締約国の排出量の合計が附属書Bの先進国の排出量全体の55%に達するという条件を満たさなければならない。55カ国という締結した国の数は2002年に条件を満たし、また、ロシアが11月中旬に批准書を国連に付託したことで、温室効果ガス排出量に関する55%という条件も満たされ、議定書発効の条件が整った。2005年2月16日に議定書は「発効」する。

米国は条約の締約国ではあるが、議定書プロセスの交渉に戻ることを、完全に拒否している。またオーストラリアも附属書Bに挙げられている先進締約国での中で批准しない立場を取っている。その他ではリヒテンシュテイン、クロアチア、モナコが批准プロセスを完了させていない。

議定書に関する交渉の行方

議定書が発効することで、この複雑な法的文書に関する10年来の交渉が一段落する。実際これが意味するのは、附属書B締約国が1997年に京都で合意された法的拘束力のある数値目標を達成する義務を国際法の下で負うということである。各国は、国内の排出量削減や、議定書で規定される様々な取引制度(交渉の経過では米国が強くこれの導入を主張していたが、議定書を批准していないため、こうしたメカニズムに参加することはできない)を利用することによって、議定書の数値目標を達成しなければない。また、第一約束期間が始まる2008年に向けて世界的な排出量取引の準備が始まり、クリーン開発メカニズム(CDM)、共同実施(JI)など総じて「京都メカニズム」と呼ばれる制度も動き出す。

京都メカニズム

議定書の第12条で規定されるCDMは、議定書の締約国である非附属書I国(開発途上国)での温室効果ガス削減プロジェクトを行う附属書I国(先進工業国)に、その事業で削減された分のクレジット(CER:Certified Emissions Reductions、認証排出削減量)が付与され、議定書の目標達成のために利用できる制度である。例えば、カナダが中国で省エネルギー事業を行った場合、あるいは日本がモロッコで自然エネルギー事業を行った場合、カナダ、日本はそれら事業によるクレジットを議定書目標の達成に利用できる。

プロジェクトがCDM事業となるためには、CDMを監督するCDM理事会の承認を得なければならない。そして、CDM事業は、そのCDM事業がなかった場合に発生していたであろう温室効果ガス排出量(ベースライン)に対して追加的な排出量削減につながること(追加性)を証明しなければならない。また、CDMは開発途上国における持続可能な発展に寄与するものでなければならない。

議定書6条において規定されている共同実施(JI)においては、附属書I国は議定書を批准した附属書I国において、温室効果ガス削減事業を行い、CDM同様その削減分を議定書目標の達成に利用できる。例えば、ドイツがロシアでの省エネルギー事業を行ったが合い、あるいはノルウェーがハンガリーで自然エネルギー事業を行った場合などに、その事業を実施したした国にクレジットが付与される。

議定書で規定される取引制度の運用には、全体の排出量が制度を利用する場合と国内の排出削減のみの場合と同じとなることが非常に重要となる。しかし、ベースラインはあくまでも該当事業がなかった場合にどのような排出傾向になるかという仮定をふくむため、クレジットを過剰に付与することになる可能性は免れない。また、国内の温室効果ガスの算定など、様々なシステムが正確に機能する必要がある。また排出量取引やJIとは違い、CDMにおいては先進工業国の排出量を増やすことにつながる。このため、CDMについては方法論がしっかりとしたものであることが非常に重要になる。

過去7年間、議論の焦点はこの制度が環境的な便益を確保できるかどうかであった。その議論の結果は完全なものではないが、全体的に今後の制度の基礎を築いたといえる。

吸収源(LULUCF)

最も懸念されるのは、この制度が排出源に関する事業だけでなく、植生などに炭素が取り込まれることが排出削減としてカウントされるいわゆる吸収源に関する事業も対象としていることである。土地利用・土地利用変化と林業の算定に関する議論は、将来の温暖化国際交渉の主要議題として取り上げられることとなる。議定書の規定では、炭素を吸収できるある一定の土地利用変化と林業に関する活動は、議定書の目標達成に利用することができる。

理論的には、1トンの炭素が樹木に吸収されれば、大気からこれが取り除かれたこととなり、化石燃料の燃焼によって排出できる量を1トン分増やすことができる。

グリーンピースは、植生や土壌が二酸化炭素を大気から吸い取る吸収源であるため、化石燃料による排出量を増加させてよいというこの論拠は間違いであると考える。残念ながら、例えば樹木は永久に炭素を貯蔵し続けるわけではなく、いつかは大気中に放出されることになる。その結果は明白であり、単純にこれは将来の世代にその分の削減を押し付けることになる。

そして、大切なことは吸収源の利用によって、化石燃料の燃焼による排出量を削減するという最も大切な活動への政治的意思や資金がそらされてはならないということである。先進工業国が一刻も早く大幅な温室効果ガスの削減を行わなければ、危険な気候変動を回避することは不可能となる。議定書の目標は排出量を削減することであって、削減を回避する制度を作ることではない。グリーンピースは、議定書のおける吸収源の利用を極力控えることを訴えている。また、多くの国がこの抜け穴を利用しないと約束をしている点にも注目したい。

資金メカニズム

米国が京都議定書から離脱した後に、2001年7月にドイツのボンで開催された条約第6回締約国会議再開会合(COP6bis)では、「ボン合意」が採択された。この会合では、EU、カナダ、アイスランド、ニュージーランド、ノルウェーなどの先進工業国は、2005年から毎年4億1,000万ドルを途上国支援のために拠出すると約束した。そして、条約の下で新しく設置された特別気候変動基金や後発開発途上国基金も対象として含まれている。これは、2001年末にマラケシュで開催されたCOP7で採択された「マラケシュ合意」で正式なものとなった。

また、2008年までにこの約束のレビューが行われることとなっている。こうしたコミットメントもあって、ついに温暖化の悪影響に対して行う対策である「適応」や、温室効果ガスの削減を行う「緩和」を途上締約国が行うための支援が動き出すこととなった。

特に、新設された基金では「適応」が優先されるべき対象として動いているが、その「適応活動」としてサウジアラビアなどの産油国が温暖化抑制活動による利益の減少に対処する活動も、基金による資金拠出対象として強く求め議論が頓挫していることや、条約の資金メカニズムを努める地球環境ファシリティ(GEF)による基金の運用方法に問題があるなど、積み残しの議論は多くある。また、条約の義務を開発途上国が遂行するためには、資金額自体が全く不十分であることは、途上国から常に指摘されるところである。

COP10の争点

これまでは、ロシアによる議定書の批准を待っていたこともあり、交渉の進捗状況は思わしいものではなかった。ロシアの批准により議定書の発効が確定した今、議定書の実施、そして第二約束期間の準備に関する交渉が大きく取り上げられることとなる。この将来の枠組みに関しては、COP10において正式な交渉が始まり実質的な制度が議論されるわけではないが、今後の議論の進め方や、条約の下で議論が行われるのか、あるいは議定書の下で行われるのかなど、今後の議論の方向性がある程度決まることになるだろう。関連する交渉議題や、サイドイベント、水面下での交渉などが行われるが、この将来の枠組みに関する議論は難航するだろう。

また、これまでは温室効果ガスの削減を行うこと(緩和)を中心に交渉が行われ、温暖化の悪影響に対する対策(適応)に関しては交渉が進んでいなかった。今の段階でどれだけ温室効果ガスの排出削減を行ったとしても、すでに大気中に排出された温室効果ガスによって温暖化は既にある程度起こるとされている。このため、特に温暖化の影響を受けやすい国々が温暖化の悪影響に対する対策を行えるように支援することが急務となっている。

このため、途上国支援のための資金の運用方法や適応策促進のための活動など、適応に関連する途上国への支援をいかに進めることができるかがひとつの大きな焦点として上がっている。

2005年には、始めての議定書締約国会合(COP/MOP)が開催される。これまでの条約締約国会合で採択された多くの決定がこのCOP/MOPで確定される。特に重要なのは、排出量削減の約束が果たされることを確保するための遵守制度である。そして議定書の遵守制度は、「遵守委員会」を議定書の義務達成のための勧告などを行う組織として持つ。遵守委員会は、締約国が約束を達成することを支援する促進部と、締約国が約束を守らなかった場合に、次の約束期間に達成できなかった削減義務の1.3倍を課すことや、京都メカニズムの参加資格剥奪などの懲罰を決定する強制履行部から成る。COP/MOP1では、この遵守委員会の帰結が法的拘束力を持つかどうかが決定される。この遵守制度がしっかりと機能するためには、法的拘束力があって然るべきである。

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